短歌 宮里勝子選

児等並び黙(もだ)し見つむる手牡丹の花火かそけく火球零るる      雲 南 多田納 力

 【評】線香花火はさまざまな形に開く一瞬一瞬が華やかで、それ故に最後の火の玉が落ちる瞬間は息をのむ。牡丹の花が咲いて散るまでを見せてくれるような手花火の観察 が丁寧で適格。

親族の両隣とも墓じまひ父母眠る墓一基ポツンと         大 田 永野砂由美

 【評】時代の流れに逆らえない哀感がただよう。櫛の歯が抜けるように消えていく墓石の跡は平らとなっている。彼岸の...