ジャズから派生したフュージョンというジャンルの音楽が1970年代から80年代にかけて流行した。父の影響で幼い頃から親しみ、今も好きなのがキーボード奏者ボブ・ジェームス。ビゼー作曲「アルルの女」をアレンジした「ファランドール」は往年のバラエティー番組「TVジョッキー」のオープニングテーマにも使われ、懐かしい。
1975年のアルバム「トゥー」収録の「ファランドール」は番組に使われた序盤もかっこいいが、一番の聴きどころはフルート奏者ヒューバート・ロウズのソロ。速吹きが圧巻だ。
クラシックのアレンジは当時の流行。ジャズトランペットの巨匠マイルス・デイビスが電子楽器を取り込んだのが始まりとされるフュージョンはロックなど他ジャンルとの融合を試みており、クラシックも素材になったわけだ。同じくキーボード奏者のデオダートは「ツァラトゥストラはかく語りき」をアレンジ。ロックの世界でも、エマーソン・レイク&パーマーが「展覧会の絵」を、レインボーが「第九」をカバーした。
BJの曲は逆にアレンジされる立場にもなっており、ヒップホップのミュージシャンにサンプリングのネタとして好まれた。例えば「トゥー」収録の「マルディグラに連れてって」はランDMCの「ピーター・パイパー」に引用された。

81年のアルバム「サイン・オブ・ザ・タイムス」収録の「ユニコーン」は、サックス奏者ジェイ・ベッケンスタインの爽やかな演奏とシンセサイザーをうまく絡める。サックスとシンセの組み合わせはこの頃のフュージョンの定番だ。BJの情熱的なソロも秀逸。終盤の星がきらめくような効果音はシンディ・ローパーの「オール・スルー・ザ・ナイト」を思わせる。
アルバムと同名の曲はイントロの「ボヨヨーン」という効果音と、ベース奏者メジャー・ホリーのダミ声スキャットが面白い。
最終的にフュージョンはシンセを多用しすぎて飽きられた。それでも、一時代を築いたのは間違いない。
思うに、あの時代、シンセはとてもかっこよく斬新だった。記者は小学2年の頃の79年、YMOの「テクノポリス」「ライディーン」に衝撃を受けた。小6の83年にはファミコンが登場し、今のゲーム機と比べものにならないチープな電子音が体に染み込んだ。
母体のジャズさえもマイナー音楽になり、あの頃ほどシンセがあふれていない今、若者にフュージョンはどう響くのだろうか。
(志)
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