「1票の格差」が最大3・03倍だった7月の参院選を巡り、仙台高裁が1日に「違憲」判断を示した。参院選の違憲判決は格差解消のため、隣接県を一つの選挙区にする「合区」を導入した2016年選挙以降で初めてだ。
全国14の高裁・高裁支部で起こされた同様の格差訴訟は2日までに「違憲状態」が4件(札幌、東京、大阪、広島)、「合憲」が4件(名古屋、松江、高松、那覇)と判断が割れている。
仙台高裁も含め、選挙無効の請求を退けているものの、違憲、違憲状態が相次いでいる状況は、投票価値の平等という憲法上の要請に対し、国会が抜本改革を先送りしてきたことへの警告である。とりわけ違憲と断じた今回の判決は、国権の最高機関のサボタージュを指弾したと言える。
次期参院選まで3年を切っている以上、「まだ高裁段階」を言い訳に、最高裁の統一判断を待つのではなく、与野党は深刻に受け止め、速やかに格差是正に向けた選挙制度改革に取り組まなければならない。
7月10日投開票の参院選では、議員1人当たりの有権者数が最少の福井選挙区と最多の神奈川選挙区や2番目の宮城選挙区との間で3・03倍の格差が生じ、19年選挙の3・00倍からやや拡大した。最大格差3・08倍の16年選挙を合憲とした最高裁判決時より格差が小さいとはいえ、19年から22年へ拡大した。
仙台高裁が判決で、格差3倍超の選挙区が三つあり全国民の2割超に当たることなどを挙げて「国会が裁量権を逸脱し、憲法上要求される合理的期間内に是正しなかった」「全く是正せず選挙に至ったことは国会が必要な考慮をしなかったと言わざるを得ない」と指摘したのは極めて重い。
参院の選挙制度改革に関しては、最高裁が13年選挙(4・77倍)を違憲状態と判断したのを受け、隣接県を一つの選挙区にする「合区」を導入して、格差を縮小する改正公選法を15年に成立させた。
その付則では、19年選挙までに抜本的な見直しを行い、必ず結論を得ると約束したにもかかわらず、「6増」という小手先の是正措置でごまかした。その後も与野党でつくる参院改革協議会が今年7月の参院選前に当時の山東昭子議長に提出した答申は、各党の主張を並べたにとどまり、具体的な方向性を打ち出せず〝裏切り〟を重ねてきたのである。
人口の都市集中が続く限り、弥縫(びほう)策を講じてもいたちごっこのように選挙の度に格差是正訴訟が繰り返されるのは避けられそうにない。合区に対しても自民党内などでは地方軽視との批判が広がる。ならばいま求められるのは、大きな視点に立ち、似たような選挙制度を採用している衆院と参院の役割分担まで踏み込んで腰を据えて議論し、文字通りの抜本改革に進むしかない。
民主主義の土台である選挙制度を変えるのは、各党の利害がぶつかり合意点を見いだすのは容易ではないだろう。安直に定数を増やすことによって格差を縮める手段も、国民は納得するだろうか。この際、議長の下に第三者機関を設置して検討を委ね、与野党はその結論に従う方式を真剣に追求すべきだ。周知期間も考慮すれば、待ったなしで良識の府にふさわしい選挙制度論議に着手する必要がある。