テイラー・スウィフトの「ミッドナイツ」。4種類あるジャケットのうちの「ジェイド・グリーン・エディション」
テイラー・スウィフトの「ミッドナイツ」。4種類あるジャケットのうちの「ジェイド・グリーン・エディション」

 10月にリリースされたテイラー・スウィフトのニューアルバム「ミッドナイツ(Midnights)」が、真夜中に書かれた曲を集めた作品だと知って、納得するところがあった。というのも、これまで聴いてきた歌には、深夜を表す歌詞がけっこう出てくるなあと感じていたから。

 特徴的なのは2am(午前2時)ごろの時刻の多さ。調べた範囲では4枚のアルバムの7曲に出てくる。

 一つ目はデビューアルバム「テイラー・スウィフト」の収録曲「メアリーズ・ソング」。「午前2時にあなたのトラックに乗って」という場面がある。

 セカンドアルバム「フィアレス」には2曲。「ブリーズ」に「午前2時、友達を失った気分」、「ザ・ウェイ・アイ・ラヴド・ユー」に「午前2時、あなたの名前を呪う」の歌詞がある。

 サードアルバム「スピーク・ナウ」は3曲に増えて、「マイン」に「午前2時半のけんか」、「エンチャンテッド」に「午前2時、消えない疑問で眠れない」、「ラスト・キス」に「午前1時58分の暗闇」という表現が出てくる。

 さらに5作目「1989」収録の「アイ・ウィッシュ・ユー・ウッド」では「午前2時、あなたの車の中」「午前2時、私の部屋の中」での出来事が歌われる。

 特定の時刻をこれほどの頻度で歌詞にするアーティストは珍しい。しかも、多くの人は活動をしていない、うしみつ時である。ほかの時刻は日中も含めほとんど歌詞に登場しないから、深夜2時前後は彼女の人生にとって特別な時間帯なのだろう。

 より広く「夜中」を意味するmiddle of the night(ミドル・オブ・ザ・ナイト)という熟語も多い。「ユー・ビロング・ウィズ・ミー」(フィアレス収録)や「オール・トゥー・ウェル」(レッド)、「デイライト」(ラバー)などに見られる。

 新アルバムのタイトルになったmidnight(ミッドナイト=真夜中)の語はもっと多く、「22」(レッド)や「スタイル」(1989)、「ニュー・イヤーズ・デイ」(レピュテーション)、「ハピネス」(エヴァーモア)などの歌詞を構成する。

 2amはともかく、ミドル・オブ・ザ・ナイトやミッドナイトは一般的な語なので、他のアーティストの歌詞にも出てくるはずだが、テイラー・スウィフトの頻度はかなり多い印象だ。

 そういうわけで、通算10作目となる新アルバムは、夜型アーティストの真夜中ソングの集大成といえそうだ。当然といえば当然だが、複数の収録曲にmidnightの語がちりばめられている。

 新作について本人は「激しさや浮き沈み、そして満ち引きのコラージュです。人生は、暗くも、星が輝くことも、曇ることも、恐ろしくも、しびれるようなものでも、熱くも、冷たくも、ロマンチックでも、孤独でもあることができる、ちょうど真夜中がそうであるように」とのコメントを発表している。

 真夜中の楽曲集というコンセプトから想像できるように、落ち着いた雰囲気のアルバム。一聴すると地味だが、どの曲にもポップな味付けがあって聴くほどに魅力が増すものだから、つい夜更かしになってしまう。(洋)
 

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