JR木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」は車両の老朽化に伴い、2023年度で運行を終える。運行終了が決まって以降、ほぼ満席の状態が続いているという。ピーク時には年間約2万人を乗せ、多くの鉄道ファンや地域住民に愛された人気列車。22年度の最終運行日、23日を前に、その魅力をあらためて体験しようと備後落合ー木次間で乗車してみた。
  ​(雲南支局・山本泰平)

備後落合駅に到着したトロッコ列車・奥出雲おろち号=広島県庄原市
 

 「おろち号」はディーゼル機関車、客車、トロッコ列車の3両編成。午後0時57分、広島県庄原市の備後落合駅で、「ブロロロ…」と重低音を響かせるおろち号に乗り込んだ。「ポーッ」という汽笛を合図に、木次駅まで約3時間の旅が始まった。

 備後落合駅を出発して約30分後、油木駅、三井野原駅を経て出雲坂根駅に向かう途中のトンネルを抜けると、日本最大級の二重ループ橋「奥出雲おろちループ」と赤い三井野大橋が一望できる開けた場所に到着した。

車窓から見える真っ赤な橋げたが特徴的な三井野大橋周辺の景色=島根県奥出雲町
真っ赤な橋げたが特徴的な三井野大橋周辺の景色を楽しむ乗客=島根県奥出雲町


 好天に恵まれ、青い空に赤や黄色に紅葉した木々や三井野大橋が映え、思わず息をのんだ。ほかの乗客も、窓のない開放的なトロッコ列車から望む絶景に「すごい」という声が次々と上がった。

目の前を通る日本最大級のらせん構造の国道314号の「奥出雲おろちループ」=島根県奥出雲町


 三井野原ー八川間の3段式スイッチバックで、列車がスノーシェルターを抜けると、乗客はトロッコ列車の後方部に集まり、急勾配をジグザグに下る様子を写真に収めていた。

急勾配を登る「3段式スイッチバック」の線路を見下ろす乗客たち=島根県奥出雲町
出雲坂根駅に停車するトロッコ列車・奥出雲おろち号=島根県奥出雲町
斐伊川に沿って出雲三成駅へ向かうトロッコ列車・奥出雲おろち号=島根県奥出雲町
出雲三成駅を出発し、水田が広がる先に広島県境の山々が一望できる区間を通るトロッコ列車・奥出雲おろち号=島根県奥出雲町
木次線で最も長い下久野トンネル(2241㍍)を通過するトロッコ列車・奥出雲おろち号=雲南市、島根県奥出雲町

 道中、窓のないトロッコ列車内は常に風が吹く。車体に何度も枝が当たり、たくさんの枯れ葉が舞い込んできた。ドライブで車の窓を全開にしても味わうことができない、周辺の自然との一体感。それがおろち号の魅力なのだとしみじみ思った。