「焼肉KAGURA」の個室で、誰の目も気にせずに食べられる肉
「焼肉KAGURA」の個室で、誰の目も気にせずに食べられる肉

 11月29日は「いい(11)肉(29)の日」。たまにはぜいたくに焼き肉を楽しみたいが、家族や友人との会食利用が多いイメージの焼き肉店に1人で入るのは、周りから寂しい人に見られそう。松江市内に「一人焼き肉」歓迎の焼き肉店があると聞き、入ってみた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 

 ▼1人で手軽に楽しめる焼き肉を

 焼き肉店はJR松江駅(松江市朝日町)の北口から、高架下沿いに西へ約150メートルの「焼肉KAGURA(カグラ)」。駅に近いため店の前の人通りは多いが、店の外からは店内があまり見えないので、確かに1人の利用でも気にする必要はなさそう。

 店の最大の特徴は全室が引き戸、またはカーテンで仕切られ、個室となっている点。最大2人までの個室(約2平方メートル)が5部屋と、最大6人までの個室(約4平方メートル)が3部屋ある。入店してから退店するまで、店員以外の人と出会うことがなく、人目を気にせずに焼き肉を心から楽しめる。特に「焼き肉店を1人では利用しにくい」という女性に好評だそうだ。

焼肉KAGURAの内観。扉やカーテンで空間が仕切られ、個室として利用できるようになっている

 田中友梨店長(30)によると、店は4月にオープン。新型コロナウイルスにより新分野展開を考える事業者が利用できる事業再構築補助金を活用し、「一人焼き肉」のニーズを取り込みつつ、感染予防策として人との接触や対面を減らせる店のスタイルを考えた。

 駅が近いため仕事や出張の帰りとみられるスーツ姿の男性が1人で多く訪れるほか、夜に若い女性が1人で利用することもあり、手応えを感じている。田中店長は「週に1、2回来てくださるお客さんもいる。居心地の良さを感じていただけているのでは」と喜んだ。

個室(1,2人用)は程よい広さで、ゆったりと落ち着いて食事ができる

 「焼き肉を1人でも手軽に楽しんでほしい」という思いがあり、料金は低く設定した。通常の焼き肉店が1人前80~120グラムなのに対し、カグラは50~80グラムに抑え、安く、多くの種類の肉を食べられるようにした。午前11時~午後3時限定のランチメニューは、カルビやハラミ、大山どりが付いて980円(税込み)で楽しめる。5等級のしまね和牛カルビを、1680円(同)で食べられるのも特徴だ。

ランチメニュー以外の単品も手頃な価格で食べられる

 

 ▼記者が実際に利用 個室の居心地は

 島根県内では珍しい、全室個室の焼き肉店。一人焼き肉とはどんな気分になるのか。焼き肉は好きだが、友人を誘ってまで行くのは面倒で、最近、全く焼き肉店に行っていない記者が実際に利用してみた。

 最大2人までの個室に入る。机一つに椅子が二つあるが、1人で利用するのが最適に感じる広さだ。椅子のそばには注文用のタブレットがあり、店員と接することなく料理が注文できる。一番手頃な値段の「KAGURAランチ」(980円)を注文した。

写真のKAGURAランチは980円。肉3種類とご飯以外にスープやキムチ、サラダが付いて千円を切るのはうれしい

 数分で扉がノックされ、料理が運ばれてきた。上カルビ、上ハラミ、大山どり、白米ご飯に加え、キムチとサラダ、スープが付いている。肉は確かに少なめかもしれないが品目は多く、千円以内でこのメニューはお得感がある。

 店内では抑えた音量の音楽が流れているものの、照明も抑え気味で、とても静か。他の客も1人、または少人数だからか、話し声や物音もほとんど聞こえない。自分が肉を焼く音だけが聞こえ、食事に集中できる。家族や友人と焼き肉をするのも楽しいが、焼き加減や、食事を進めるペースに口を出されることもなく、自分が好きなように黙々とおいしい物が食べられるのは新鮮に感じた。焼き肉店で肉を食べ過ぎた後に感じる気だるさもなく、午後からもいきいきと活動できそう。

複数人で焼き肉に行くと、大抵1人は焼き加減に厳しい人がいる上、網上にどこまで自分の肉を載せていいのか気を遣う。網を独占できるのはなかなか気持ちがいい

 田中店長によると、利用客の滞在時間は比較的長い方だという。これだけ居心地が良ければ、長居してじっくり食事を味わいたくなるのもうなずける。店員と接するのが入店時、配膳時、会計時だけと最低限になっている点も、1人で食事したい人にはありがたい。また「焼き肉が食べたいな」と思い立った時に、ふらっと来店したいと思った。

 

 田中店長は「焼き肉だからと肩肘張らず、軽く普通の食事に行く感覚で利用してほしい」と話した。焼肉KAGURAの営業時間は午前11時~午後3時、午後5~11時で不定休。ランチの時間帯以外は牛、豚、鶏肉の各部位の単品メニューやドリンクの提供になる。