鼻がツンと冷えた朝、奥出雲町の有線から流れるラジオ体操の音楽で目が覚めた。その後いろいろな案内が流れる。横田のコミセンから「藤原辰史さんの里帰り講演が開催されます」と案内があった。布団の中でちょっと笑った。

 私が中学校から高校まで欠かさず聞いてきた有線放送は、お店のセール、ホッケー全国優勝、火事や葬儀、熊の出没まで、いろいろなことを教えてくれたのだが、自分の名前が出るとさすがに恥ずかしい。確かに私も餌を探して里に迷い出た熊のようなものかもしれない。今日は、母校横田中学校40周年の講演と、コミセンの「里帰り講演」のダブルヘッダーである。

 ふるさとから都会に出て、何か偉大なことを成し遂げた後、久しぶりに故郷に帰ることを「故郷に錦を飾る」と言うらしい。

 現にそう言ってくださる方がいたのだが、私はこの言葉が好きではない。横田に...