「子どもご縁食堂」で夏野菜カレーを味わう子どもたち=2022年10月4日、松江市殿町
「子どもご縁食堂」で夏野菜カレーを味わう子どもたち=2022年10月4日、松江市殿町

 2023年が幕を開けました。今年ほど平和の尊さが身に染みる年明けもないでしょう。

 ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻が始まり、はや10カ月が過ぎました。これに呼応するかのように、中国は軍事的な動きを活発化させ、台湾有事も取り沙汰されています。北朝鮮もミサイル発射をやめようとしません。

 こうした事態を受け、政府は防衛力強化に向けた新たな「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を閣議決定しました。防衛関連予算を27年度に国内総生産(GDP)比2%に大幅増額するとともに、反撃能力(敵基地攻撃能力)保有を明記しています。

 相手国に攻撃を思いとどまらせる抑止力向上が狙いですが、防衛力増強は逆に地域の緊張を高める恐れもあり、危うさを感じます。憲法9条のもと、専守防衛を掲げてきた安全保障政策の大転換となるだけに、国会で徹底的に審議し、総選挙で国民に信を問うべきです。

 私たちの暮らしに目を向けると、ウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機や、円安による物価高騰などで生活は厳しくなるばかりです。「せめて賃金を上げてほしい」という叫びも聞こえてきます。こんな社会情勢だからこそ、人と人との連帯が、より大切になってくると思います。

 それを実感したのが、山陰中央新報社が松江市殿町の本社近くにある「殿町ギャラリー」を改修し、昨年10月に開設した「子どもご縁食堂」でした。異なる世代の人たちが交流し、にぎわう「居場所」づくりが目的です。

 私も食堂を手伝っていますが、訪れた親子連れだけではなく、ボランティアで参加した新聞社の社員や地域の皆さんの笑顔が印象的でした。趣旨に賛同する多くの皆さんから、食材の提供や寄付を受けており、感謝しています。

 新聞社が子ども食堂を設けるのは全国初とのことです。新聞社自体が運営して情報発信することで、子ども食堂の取り組みと支援の輪がさらに広がっていくことを願っています。

 翻って、今年は4年に1度の統一地方選が控えており、4月9日には島根、鳥取両県知事選が投開票されます。人口減少、少子高齢化という重い課題が横たわっているのに加え、新型コロナウイルスもまだ、私たちの生活に制限を与えています。

 こうした状況にあって、知事選などは今後の地域づくりについて、あらためて考える契機になります。地域課題の根源をあぶり出して、解決に向けた処方箋を紙面で提示していきます。

 山陰中央新報社は昨年5月、創刊140周年の節目を迎えました。これも読者の皆さんの支援のおかげです。今年も紙面やデジタル版「Sデジ」での情報発信、社会活動など通じて山陰を元気にしていきます。