2018年の町議選で議員定数割れとなり、定数削減と議員報酬増の改革を行った山形県庄内町議会=2021年12月
2018年の町議選で議員定数割れとなり、定数削減と議員報酬増の改革を行った山形県庄内町議会=2021年12月

 政府の地方制度調査会が昨年末、地方議会改革に関する答申を岸田文雄首相に手渡した。「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策」と銘打ちながらも、議員のなり手不足を解消する具体策は乏しい。不十分と言わざるを得ない。

 地方議会は存在意義が問われている。議員の政務活動費の不正利用や女性議員に対するハラスメントなどの不祥事が起き、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と関係のあった議員がいたことも表面化したからだ。首長の判断を追認するだけの組織との批判も根強い。

 人口減少や高齢化の影響を受ける地域の議会は、なり手不足が特に深刻だ。2019年の統一地方選を見ると、無投票で当選した町村議員の割合は23%を超え過去最高レベルとなっている。無投票の議会では、女性議員数が少なく、議員の平均年齢が高いところが多い。

 今春の統一地方選でこれらの傾向が強まれば、議会へのさらなる信頼低下につながる。女性や60歳未満の人がもっと議員を志し選挙に出やすくする方策を整えることが不可欠だ。その点から地方議会側が求めた企業の立候補休暇制度の法制化に踏み込まなかったのは残念である。

 答申では、企業側の自主的な取り組みとして休暇制度の導入や、議員との副業・兼業を可能とする制度の創設を要請するよう提案した。人手不足から企業側が応じるのは難しいだろう。それでも地域を支える一員として協力を求めたい。

 地方自治は、首長と議員の双方を選挙で選ぶ二元代表制で成り立っている。議会には、自治体の中で大統領的な力を持つ首長の独裁に歯止めをかけ、多様な意見を行政に反映させるという大切な役割がある。

 答申では、地方自治法に(1)議会は住民が選んだ議員で組織する(2)自治体の重要な意思決定に関する議決を行う(3)議員は住民の負託を受け誠実に職務を行う―ことを位置付けるよう提言した。議会側の求めに応じた内容だ。議会や議員の自覚を促す効果は期待できるものの、それだけでは不十分ではないか。

 行政組織のトップである首長に比べ、議員の政策立案や行政監視の能力不足は否めない。力を付けるには、議員の報酬を引き上げて多様な人材を呼び込むことが肝要だ。会社員の副業・兼業も積極的に受け入れるべきだ。

 議員の活動を支える議会事務局の能力を向上させることも必須だと指摘したい。複数の自治体の政策を比較しながら、課題、改善点を研究するような地域のシンクタンクを設立し、議員に情報提供して活動を支えることも一つの方策になる。

 デジタル化も踏み込み不足と言える。議会の委員会については、条例で定めることでオンライン開催が可能とされる。本会議は「出席」する必要があり、地方自治法の解釈から議場にいることが求められるという。今後、兼業の促進の観点からも本会議についても、オンライン開催を認める解釈に変更することが時代に合っている。

 同時に全ての委員会、本会議をインターネットで公開し、議会のホームページでどのような議案を審議しているのかがすぐに分かるように明示する。この積極的な情報公開によって、住民の関心が高まり、議員らのやる気アップにもつながるはずだ。