昨季までFC神楽しまねに所属し、日本フットボールリーグ(JFL)でプレーした佐藤啓志郎さん(28)が15日、松江市内でサッカースクールを開校する。クラブが経営難に陥り選手として苦難を味わう中で、あらためて感じたのは競技の魅力を次世代に伝える重要性。「島根の子どもたちが心からサッカーを楽しめる場をつくりたい」と新たな歩みを始める。 (原暁)
佐藤さんは、北海道芽室町出身で2019年にFC神楽しまねの前身・松江シティFCに入団。豊富なスタミナを生かして攻守で貢献し、21年にはJFL過去最高の5位に入る立役者になった。
選手として階段を順調に上っていたが、昨年7月にクラブ運営会社の資金難が発覚。チームがこの先、どうなるか分からないという不安もあり、試合会場で現状を説明する役員に強い口調で思いをぶつけたこともあった。その時、視界に入ったのは自分を見つめる子どもたちの姿。「夢を与えるはずの立場なのに逆に悪い印象を持たせてしまった」とわれに返った。
そんな中、以前から持っていた「Jリーグ入りを目指すことが全てではない。チームとファンが『ギブ・アンド・テイク』の関係を築き、応援してもらえる流れをつくることも大事」との思いが次第に強くなり、方向性の違いを感じてチームを退団。他チームからのオファーもあったが、もともと子ども好きということもあり、故郷を思わせる自然が残る松江市でスクールを開校するため、現役を引退した。
「KEISHIサッカースクール」は有料で3歳から小学6年生までが対象。場所は松江市総合体育館など市内の施設で、子どもたちには週1~2回ペースで参加してもらう。テクニックの上達よりも競技の楽しさを知ってもらえるような運営を目指し、今後は保育施設などでの巡回サッカー教室も行う予定だ。
佐藤さんは「(FC神楽しまねの件で)サッカーにネガティブなイメージを持ってほしくない。楽しいものだと伝えたい」と第二のサッカー人生に夢を膨らませる。