東日本大震災から10年。千年に1度といわれる津波の被災地では、海岸に巨大な防潮堤が造られた。高台には新しい街ができ、被災地をかさ上げした地区もあった。災害時には支援物資の輸送などに役立つ高速道路の整備も、地場産業の再生も進んだ。

 32兆円の復興予算を使いインフラ復旧だけでなく「生活の再建」にまで踏み込んだ。だが、この「創造的復興」も多くの課題を残した。次に生かすために検証したい。

 課題の一つは、東京電力福島第1原発事故による被害を受けた福島県の沿岸部に帰還困難区域が広がり、原発廃炉の見通しも立たないことだ。汚染処理水の処分など解決されない問題も山積する。国や東電が約束通り地域再生の責任を最後まで果たすよう強く求める。

 次の課題は復旧と復興の連携が乏しかったことだ。災害が起きると防潮堤や道路、学校など被害を受けた公共施設は国などの担当部局が早急に元に戻す。一方、被災地域は市町村が住民と話し合いながら再建する。施設の復旧と、地域の復興が別々に進められた結果、防潮堤に守られた沿岸地域に人が住まないなどのミスマッチが起きる。

 復興事業の長期化も課題だ。当初は戻るとアンケートで答えた人も、避難先で仕事を見つけ考えを変えることもある。このため完成まで時間がかかった住宅地や災害公営住宅では空き地や空き部屋が目立っている。

 これらの事態を避けるには、復興事業を早急に始めることが重要だ。そのため大災害が起きた後に地域をどう再建するのか、コンパクトな街にするのかを住民と自治体があらかじめ話し合って決める「事前復興」の活動が不可欠である。

 さらに地域によっては、復興計画がまとまるまで復旧事業を止めておくといった柔軟な連携も提案したい。急速な高齢化に加えて、時間の経過に伴って戻る人が減ることを前提として、計画を絶えず見直せるようにすることも必須と言える。

 東日本大震災では深刻な被災状況を考慮し復興事業への地元負担はなかった。これが過大な復興計画につながったとの指摘もある。今後の大震災では被災自治体の一部負担も検討すべきだろう。

 産業の再生では「グループ補助金」という制度が導入された。「私有財産の災害復旧に公費を入れない」というそれまでの哲学を転換、共同で復興事業計画を作った事業主を支援する方法だ。

 被災地では水産加工業などが再建されたものの、一度失った販路をなかなか回復できず、人口減少による人手不足も相まって元に戻ったとは言えない。原材料を供給する漁業の不振も影響する。この補助金は復旧に主眼を置くが、被災をきっかけに新しい事業分野にも踏み出せるような支援も考えるべきだ。

 「復興の司令塔」である復興庁は、規模が縮小され2030年度まで存続する。今後は復興ノウハウの継承に加え、事前復興の全国への普及がより重要になる。そのためにも防災部局との統合の議論が待たれる。

 国難ともされる南海トラフ巨大地震などは、人口減少・高齢社会が進む中で発生する。国が今回のような手厚い支援ができるほど財政的に余裕があるとは思えない。被害を最小限にする「減災」の取り組みを全国で充実させなければならない。