「ハートビート・シティ」のジャケット
「ハートビート・シティ」のジャケット

 洋楽を聴く時、歌詞の意味は気にせず歌も音として聴く方だが、カーズは例外。失恋の痛手を引きずっていた16~17歳ごろに初めて聴いたせいか、心に刺さった。「bye bye love」とか「who’s gonna drive you home tonight(今晩、君は誰に送ってもらうのか)」とか涙が出る。

 1970年代末から80年代半ばが全盛期のロックバンド。ギターを軸にしたロックとシンセサイザーをうまく融合させ、古さと新しさ、ロックとポップスを同時に感じさせる。曲によって、リック・オケイセック(リズムギター)か、ベンジャミン・オール(ベース)のどちらかがリードボーカルを務めていて、ベンジャミンの歌が好みだ。

 「who’s gonna―」の歌詞があるヒット曲「ドライブ」(1984年のアルバム「ハートビート・シティ」に収録)はシンセが前面に出た美しいバラード。自由奔放な彼女に対し、君のことを分かっているのは僕しかいないのに、と気をもむ男の心境を歌う。

 うじうじソングが真骨頂。最もよく聴いた「バイ・バイ・ラブ」(78年のアルバム「錯乱のドライブ」に収録)も心に迫る。妙に明るい曲であまり好きじゃないが「ユー・マイト・シンク」(「ハートビート・シティ」収録)はストーカー男の歌だ。

「キャンディ・オーに捧ぐ」のジャケット

 歌詞抜きで考えて好きな曲は「キャンディ・オーに捧(ささ)ぐ」(79年の同名アルバムに収録)。リードギター奏者エリオット・イーストンの演奏がよく味わえるハードな曲で、うねり泣くソロがいい。要所で印象的なメロディーを滑り込ませるエリオットのギターはカーズの魅力の一つ。メタルの大物バンド、ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュが影響を受けたギタリストの1人だという。

 このアルバムはジャケットも秀逸。セクシーな女性を描くピンナップアートの第一人者アルベルト・バルガスの作品で、いかにもアメリカンな感じがいい。

 人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)のキャラクター名のネタ元としてカーズを知り、最初に手にしたのが当時出たばかりのアルバム「ドア・トゥ・ドア」(87年)だった。この売れ行きが不振で解散し、カーズ自体が過去の思い出になってしまったことも切なく響いた。カーズは渡辺美里とともに、ほろ苦い青春の歌だ。 (志)
 

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