山陰両県のクリエイターが全日本広告連盟山陰大会に合わせてつくった特別紙面
山陰両県のクリエイターが全日本広告連盟山陰大会に合わせてつくった特別紙面
七咲友梨さん
七咲友梨さん
山若マサヤさん
山若マサヤさん
澤野大地さん
澤野大地さん
山陰両県のクリエイターが全日本広告連盟山陰大会に合わせてつくった特別紙面 七咲友梨さん 山若マサヤさん 澤野大地さん

 コロナ禍で東京一極集中の現状が見直され、地方志向が高まりつつある。全国の中でも少子高齢化、人口減少に昔から向き合ってきた山陰は、新しい生活様式が広がる今、先頭を走っているかもしれない。そんな山陰の姿を発信するため、松江市で20日から開幕する「第69回全日本広告連盟(全広連)山陰大会」に合わせて、山陰両県ゆかりのクリエーターが特集紙面をつくった。テーマは「ニューノーマル ニューローカル 山陰 つぎの答えは山陰に。」制作に携わった3人に、紙面に込めた思いを聞いた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

特集紙面はこちらから

 

▼山陰の人たちにこそ気付いてほしい

 写真家、七咲友梨さん(41)東京都在住

 益田市出身で、東京などで役者として活動した後、映像や写真の撮影を担う写真家になった。特集紙面では、計9ページの写真撮影を担当した。撮影の際は、被写体だけでなく撮影の場にいる全員との一体感を意識しており、「写真の見た目の格好良さだけでなく、山陰の『手触り感』を伝えられる作品にしなければという使命感があった」と明かす。

 山陰には自然や人柄など他にはない魅力がある。ただ、山陰の人々が、地方住みであることをたびたび卑下することに以前から違和感を抱いていた。「山陰のひとたちにこそ魅力に気付いてほしい」という思いが人一倍強く、くすぶっていた思いを制作にぶつけた。

 印象に残ったのは、島根県美郷町でイノシシの皮で革製品を製作している婦人会への取材。取材相手の厚意で急きょ紹介された団体だったが、年配のメンバーが話す内容や雰囲気は、まるで10代の少女のように「チャーミング」だった。「この雰囲気を絶対に写真に残したい」とメンバーのポーズや構図を工夫。試行錯誤しながら30分粘って撮影し、温かく柔らかい笑顔を浮かべた4人の「ローカルヒーロー」が紙面を飾った。

 山陰の人々が「自分事」として取材に協力してくれる中で、自身と生まれた地とのつながりを再認識した。「自分が強く感じている山陰の魅力が、紙面を通してたくさんの人に届けばいいなと思う」。特集紙面の撮影を通した新しい出会いに、背中を押された。

 

▼外から見た山陰の魅力伝えたい

 編集者、山若マサヤさん(35)東京都在住

 東京を拠点に編集者として活動し、特集紙面では編集長として取材、執筆などを担当した。他の2人と比べると山陰への縁は薄いが、以前の取材で訪れた大山の雄大な自然に魅了され、山陰に関心を抱いている。外から見た山陰の魅力のピックアップを強く意識し、「地域外、都市部の人が読んだ時に『これはすごい』と思える部分を広く紹介できるよう意識した」と熱い思いを話す。

 山陰の率直な印象は「良くも悪くも商売っ気がない」。取材相手は、里山や高津川といった他の地域から見ると特別なことでも、ごく普通のこととして話していた。「暮らしの中で長年守り継がれてきたからこその反応。自分が感じた特別な感覚と、住民が持つ当たり前な感覚とのコントラストが際立つ紙面になったのでは」と振り返る。

 表紙にある「つぎの答えは山陰に。」というフレーズにも頭を悩ませた。都市生活者として、山陰が持つ「当たり前の営み」に学ぶべきだと感じ、当初は「新しい常識は山陰に」と考えていた。ただ、都市と地方の対立を促すべきではないとの思いも強い。都市生活者の心に届くように、自身が感じた山陰の魅力や気質を表現できる言葉に思いを巡らせた。「山陰には都市と地方がより良い方向に進むための答えがある」と、「答え」という言葉を思いついた。

 普段は旅行雑誌の出版に携わっており、新聞という形での発信はあまりない。「購読者だけでなく、旅行でふらっと山陰に来た人がホテルなどで手に取り、山陰やクリエーターに興味を持つようなことになれば面白い。それだけの魅力がある紙面になっている」と期待する。
 

▼全国だけでなく山陰に向けてもメッセージ

 ディレクター、澤野大地さん(35)出雲市在住

 有限会社パリティクラブ(松江市中原町)

 特集紙面全体を統括するクリエーティブディレクターを担当した。地元山陰のすごさと楽しさを全国の老若男女に共感してもらえるよう、写真や手紙、住民の言葉などを題材に、新聞記事とはひと味違ったキャッチーな表現にこだわった。「山陰のクリエーターの総力を結集した紙面を目指したし、そうなったと思う」と自信たっぷりに語る。

 育ちは松江市。全国的に人口減少が進む中、島根県立隠岐島前高校が全国から地方留学を受け入れるなど、山陰の先進的な取り組みにかねてから注目していた。「住民発信の取り組みが多く、覚悟の強さを感じる。全国が山陰の姿勢に学ぶべき点は多い」と強調する。

 紙面では、自身の憧れで広告写真の第一人者、藤井保さん=島根県出身、大田市在住=の紹介ページを発案した。世界を渡り歩いた末に、島根への定住を選んだ藤井さんの思い、写真を見開きで特集したのは「広告界の第一人者がみんなと同じ島根にいるんだよと伝えたい。地方だからできない、なんてことはない」という思いからだ。

 紙面には、山陰の魅力の全国発信だけでなく、山陰に住む住民へのメッセージを込めた。「山陰にはこれだけ全国に自慢できるものがある。山陰の中の人たちが『こんな風に発信できるんだ』と気付くきっかけになればとてもうれしい」とほほ笑んだ。