除名され取り外されるガーシー前議員の氏名標=15日、参院本会議場
除名され取り外されるガーシー前議員の氏名標=15日、参院本会議場

 昨年7月の参院選で初当選して以来、国会欠席を続けたガーシー参院議員が議員の資格を失った。参院本会議の決定で「除名」の懲罰を受けたためだ。除名は国会議員への懲罰のうち最も重く、現憲法下では1951年以来72年ぶり3人目という極めて異例の事態だ。

 憲法が「全国民を代表する」と位置付ける国会議員は、国民生活に関わる法案や政策の是非を国会で論議し、賛否を明らかにする使命を負っている。民主主義を担う重い職責を果たさず、身勝手な振る舞いに終始した以上は、除名はやむを得ない。

 ガーシー前議員の「職務放棄」は、国民への背信行為と言えるが、国会議員に選んだのも、一部とはいえ有権者たる国民である。

 せっかくの投票が無に帰さないように、立候補者が国権の最高機関の一員としてふさわしいかどうか、有権者は投票に当たって候補者の資質を見極めるよう努めたい。

 暴露系ユーチューバーとして知られるガーシー前議員は、参院選比例代表にNHK党から立候補し、28万余の個人名票を集めた。選挙中から海外にとどまり、議席を得てからも帰国せず、国会出席は一度もなかった。

 この間には、警視庁が動画投稿サイトで著名人らを脅迫、中傷した疑いでガーシー前議員の関係先を家宅捜索。除名を受けて逮捕状を取るに至った。

 党名を「政治家女子48党」に変更するまでN党の党首だった立花孝志氏ら党側は「海外から議員活動をすると公言して当選した」と指摘。帰国すれば「不当逮捕される恐れがある」と反論してきたが、大多数の有権者は賛同できなかったはずだ。

 当選後、給与に当たる歳費や期末手当など合計で2千万円近くが支給されていることを考えれば、なおさらではないか。

 国会議員らのスキャンダルを暴露するとしていたガーシー前議員に投票した有権者には、不祥事が後を絶たない政界への鬱(うっ)屈(くつ)した思いがあったのだろう。国政参加の道を広げるため、ガーシー前議員にオンライン審議実現を託したのかもしれない。

 参院選で棄権せず、1票を投じた行為は尊い。だが、憲法をはじめ現行法制に従って議員活動するのが前提であり、独りよがりの手法で政治の現状は打破できないと理解してほしい。

 国会法は議員の登院義務を定めている。参院は先月の本会議で、度重なる登院要請を拒否したガーシー前議員に、4段階ある懲罰のうち3番目に重い「議場での陳謝」を課すことを決めた。

 すぐに除名としなかったのは、本会議で出席議員の3分の2以上の賛成が必要とされるほど、議員の身分は守られるべきだとの発想があるからだ。

 ガーシー前議員は、いったんは陳謝を受け入れながらほごにしたため、参院は再度本会議を開き、除名の懲罰に踏み切った。慎重な手続きを経た結果であり、政女党側は「少数派の排除は許されない」と主張したが、的外れもいいところだ。党としてガーシー前議員を擁立した責任を自覚すべきだ。

 4月には統一地方選挙がある。いずれ国政選挙も行われる。今回のような問題を再発させないために、政党は議場で論陣を張れる候補を推し立て、その中から有権者は投票先を冷静に選択してもらいたい。