日韓間を両国首脳が盛んに行き来し、さまざまな問題で合意形成を図る「シャトル外交」が、「最後」になっていた2011年12月以来、復活することが決まった▼日韓シャトル外交と竹島問題の相性はよくない。ソウルであった05年6月の第3回は、同年3月に島根県が「竹島の日」を定めた直後の会談だった。議題になる格好の機会に思われたが、期待外れだった。当時の小泉純一郎首相は「対立をあおるのではなく、理性的に友好関係を深めようというのが会談の趣旨」と取材に答えた▼12年に日本側がシャトル外交を中断したきっかけは、韓国・李明博(イミョンバク)大統領の竹島(韓国名・独島(トクト))への上陸騒ぎだった。相互訪問という「形」を守ろうとすると、竹島問題は常に〝厄介物〟扱いされてしまう。竹島がキーワードになった11年前は、むしろ当時の野田佳彦首相が韓国に乗り込んだ方がよかったのかもしれない▼今回シャトル外交の復活で合意したのは前進だが、地政学的に見て、日韓は価値観で争う国同士ではない。シャトル外交は政治上の価値観の違う国のトップ同士があえて相互訪問を繰り返すことで、違いを擦り合わせるところに価値がある▼おとといの共同会見で岸田文雄首相は「腹蔵なく話す」と意気込みを語った。言葉の軽さを露呈しないよう、領土問題のようなひりひりした話をしても両国関係が崩れないような訪問をしてほしい。(万)