島根、鳥取両県の知事選が23日に告示され、統一地方選がスタートする。人口減少に歯止めがかからない両県の選挙戦で問われるテーマや、知事と県議が果たす役割とは何か。法政大大学院の白鳥浩教授=現代政治分析=に聞いた。 (聞き手は東京支社・原田准吏)
―選挙を通じて何が問われるか。
「生活を問うのが統一地方選だ。岸田政権が選挙をにらみ、問題として取り上げたのが少子化対策。子育てしやすい環境は都会より地方にアドバンテージがある。社会構造の大きな転換が要請されており、いきなり国レベルではできないため、地方がモデルケースを示す必要がある」
「二つ目の課題は物価高だ。都会と比べて県民所得が低い上、自動車利用や灯油使用が多い地方は、より影響が大きい。さらに旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政治、特に自民党との関係も問われる」
―長年の課題である東京一極集中を是正し、地方分散型社会を実現するため、知事や県議の役割は何か。
「東京追従ではなく、島根や鳥取でどのようにサステナブル(持続可能)な自治体をつくっていくかを提起するべきだ。政府のデジタル田園都市国家構想は、東京に従属した形での地方でしかない。東京と違う地方のメリット、価値観は子育てに何かヒントがあるような気がする。国も都もお金を配ることしか考えておらず、サービスをどう提供できるかが重要だ」
―現職の知事と県議はこれまでの任期4年間のうち、3年間で新型コロナウイルス対策に追われた。
「3年間していたマスクを投票の直前にしなくてもよくなった。(政策の進捗(しんちょく)状況は)今まではコロナを理由にしていれば良かったが、今回はコロナ後の未来をどうつくっていくかを問う選挙にしないといけない。コロナに打ち勝ったということをアピールする業績投票になりそうだが、少子化対策や地方創生を訴える未来志向が求められる」
―求められる知事像とは何か。
「コロナ禍で皆が地方自治の重要性に気付いた。例えば、ワクチンを打つスピードも自治体間で差が出た。いま一度、地方自治の在り方を検証する必要がある。危機管理の中でのリーダーシップが改めて問われている。今まではコロナに対してだったが、これからは物価高や人口減少という直面する危機に対してどうリーダーシップを発揮していくかだ」
―旧統一教会問題で揺らいだ政治の信頼を回復するには何が求められるか。
「(関係が取り沙汰された)細田博之衆院議長(島根1区)は十分に説明責任を果たせたか。地元・島根の統一地方選は、どういった関係を旧統一教会との間で示すのかという点で全国が注目している。『関係を絶つ』と臭い物にふたをするだけでなく、生活基盤を脅かすような過度な献金を行う団体は反社会的だと確認し、教団側の価値観を変える契機になればいい」
しらとり・ひろし 静岡県出身。早稲田大学卒。長崎県立大専任講師や静岡大助教授を経て、現在は法政大大学院政策科学研究所の所長を務める。主な著書に「都市対地方の日本政治」や「2021年衆院選」がある。54歳。