「初心に返る」と言うときの初心はいつのことか。ふと浮かぶのは大学の入学式、構内の桜並木を歩く自分の姿だ。

 1995年春、阪神・淡路大震災の影響で山陽新幹線の姫路―新大阪間は不通。入学式の前々日に、出雲市から母と山陰線で大学がある京都へ入った。式を待たずに母は帰ったが、ホームシックどころか初めての1人暮らしと、始まる大学生活に浮き立っていた。

 よく晴れた式当日、サークルの勧誘でにぎわう構内を歩き、会場へ向かう途中、頭上から花びらが舞った。今思えば、自立にはほど遠かったが「大人への階段を一歩のぼらん」と、見上げる桜に意気込む、あれが「初心」だったと思う。

 初心といえば、...