9道府県の知事選が告示され、街頭演説する立憲民主党の泉健太代表。統一地方選前半戦では野党第1党の存在感を示しきれなかった=3月23日、千葉県市川市
9道府県の知事選が告示され、街頭演説する立憲民主党の泉健太代表。統一地方選前半戦では野党第1党の存在感を示しきれなかった=3月23日、千葉県市川市

 各政党の地力を表す統一地方選の前半戦は、野党勢力の明暗がくっきりと分かれた。日本維新の会は知事、市長の大阪ダブル選挙と奈良県知事選を制し、道府県議選でも議席を倍増させたのに対し、立憲民主党は改選議席を割り込んだ。

 確かに維新の勢いは他党の脅威だった。とはいえ、全国津々浦々まで張り巡らせた地方議員のネットワークを誇る巨大な自民党に比べれば、まだまだ力不足だ。長年の課題である地方組織の強化が改善されない立憲民主も、抜本的な立て直しに迫られている。

 3年余にわたった各自治体の新型コロナウイルス対応の評価も問われた今回の地方選。大阪は感染者数の累計が東京より約150万人少ないものの、死亡した人が大きく上回っており、維新による府、市政が十分に機能したとは言い難い。感染の拡大防止効果があるとして、特定のうがい薬を挙げたり、「大阪で第一歩を踏み出す」とワクチン開発の期待をあおったりしたが、空振りに終わっている。

 それでも大阪を席巻したのは、既成政党への不信に加え、維新の訴える「改革」が好感されたからだ。13道県議会で初めて議席を獲得して全国政党化へ足掛かりを築いたが、ここから勢力を拡大していくのは容易ではない。国政で存在感を発揮していくことが欠かせず、これからが正念場と言えよう。推進するカジノを中心にした統合型リゾート(IR)誘致などでは、独善を排し、住民の声に謙虚に耳を傾けることも求められる。

 野党第1党の立憲民主は「政権交代」の目標がお題目に過ぎないと疑わざるを得ない消極的な取り組みだった。道府県議選の候補者は、自民党の1306人に対し、島根2人、鳥取7人を含め246人。全体の37%の選挙区が無投票になったのも、立憲民主の責任は小さくない。

 「国民の豊かさと幸せが失われた10年を取り戻す」と掲げ、少子化対策や子育て支援、生活最優先の政策をどんなに作成しても、全国各地でそれを説く地方議員や候補者の絶対数が圧倒的に少なければ浸透するはずもない。知事選では島根、鳥取をはじめ相乗りが目立ち、何よりも保守分裂となっても、自前の候補を擁立できなかった体たらくは猛省すべきだ。

 道府県議選も含め、「候補を出しても勝てない」という〝敗北恐怖症〟に陥っているとすれば深刻だ。後に振り返れば、野党内の主導権を握る党が入れ替わるきっかけとなった選挙と位置付けられるかもしれない。

 共産党も道府県議選で24議席減らし、退潮が際だった。唯一の空白県の愛知で議席を獲得しながらも、新たに新潟、静岡、福井、福岡、熊本の5県で県議がゼロになってしまった。最前線で活動する党員の高齢化が指摘される上、開かれた政党をアピールするために党首選が必要だと問題提起した古参党員を、問答無用で除名処分にした「お家騒動」も影響を与えた可能性もあり、しっかり検証する必要がある。

 国政も地方行政も、政治の場に緊張感が欠かせない。首相や首長が率いる行政を、議会が厳しくチェックしてこそ、民主主義は機能する。地方では首長も議会も住民の投票で選ぶ「二元代表制」を採用している意義を、野党は再認識してもらいたい。足腰を徹底的に鍛える地道な努力がなければ政権交代は遠い夢だ。