今年は多くの地域で平年よりも早く梅雨入りし、大雨も観測された。地球温暖化の影響もあって、災害の激甚化、頻発化は進んでいる。昨年7月には、停滞する梅雨前線の影響で熊本県の球磨川が氾濫するなど各地で深刻な被害があった。早めに家族で備えを再確認しておこう。

 まずリスクの点検だ。住んでいる自治体がインターネットで公表する「洪水ハザードマップ」などを見ておこう。近くの河川が氾濫した場合、どれぐらいの深さの浸水になるか、どこに避難すべきかを調べ、家族で情報を共有しておきたい。

 浸水する恐れのある地域に住んでいるのであれば、大雨の可能性があるときには、安全な所に住む親族や避難所に身を寄せるといった早め早めの避難を心掛けたい。

 今国会で改正災害対策基本法が成立し20日に施行された。これに伴い大雨の際に避難を促す表現も変わるので注意が必要だ。例えば5段階の警戒レベルのうち3(災害発生の恐れがある)では、市町村から「避難準備・高齢者等避難開始」の情報が出されていたが、今後は「高齢者等避難」と簡略化した。

 警戒レベルが一つ上がった4(災害発生の恐れが高い)では「避難勧告」、次に「避難指示」の情報が出されていた。「指示が出るまで大丈夫」などと誤った受け止めにつながる恐れもあり、「避難指示」に一本化した。この段階で必ず避難を終わらせよう。

 高齢者や体の不自由な人を対象にした個別の避難計画の作成が市町村の努力義務となった。避難行動要支援者の名簿はほとんどの市町村で作成されたが、誰と一緒に、どう避難するかを新たに定めることになる。

 ただ、家族や近所の人がいつも助けられるとは限らない。台風の来襲など動きが予測できる場合は、安全に移動できる段階で行政が手助けして避難所に連れていくことも考えるべきだろう。

 気象庁は、豪雨を招き災害リスクを急激に高める「線状降水帯」が発生している可能性が高い場合、6月中旬から都道府県の地方ごとに発生を伝えた上で「命に危険が及ぶ災害発生の危険度が急激に高まっています」などと呼び掛ける。発生の予測は難しいが、まずは発生情報を生かし迅速な避難につなげたい。

 大雨のときの政府の役割は従来、被害が出てから災害対策本部を設置し自治体の対応を支援することだった。今回の法改正によって、災害が発生する恐れの段階で対策本部設置が可能となった。政府が主導して被害を防ぎ、軽減するための積極的な対応を期待したい。

 例えば2年前の台風19号(東日本台風)では首都圏を流れる荒川の氾濫の懸念が高まった。関係地では行政区域を越える避難が必要な人は約255万人とも試算される。広域避難は市町村間で協定を結び実施することになっているが、避難のタイミングや手段を定め、鉄道やバスなどの公共交通機関の活用が不可欠だ。

 一方で、急速な気象の変化や鉄道などの早期の計画運休もあり、遠方の自治体への避難は難しいとの指摘もある。実現のため国と自治体が鉄道事業者らと連携し、早くに広域避難を始める計画を作成するべきだ。さらに巨大台風などのケースでは、国の災害対策本部が広域避難を主導するよう提案したい。