薬物に手を出す者は意志の弱い愚か者だろうか。いや、人はどうしようもない「痛み」を癒やすために、声にならない声を表現しようとするのだと今、倉田めば(68)は考える。

 とびきりの優等生だった。北海道の国立大付属中で1番の成績。2年生で5番に落ちたとき、肩の荷が下りた。親や教師の期待に応えていい子でいることの重圧は、限界にきていた。「これで不良になれる」。そう思って手を出したのが、極端なことに接着剤だった。

 自宅のトイレで吸ってみた。体がジーンと熱くなって、...