二木芳人客員教授
二木芳人客員教授

新型コロナウイルス感染症 3年半の総括と次への備え
対策や政策 全て検証必要

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が17、18日、米子、松江各市であった。昭和大医学部の二木芳人客員教授が「新型コロナウイルス感染症 3年半の総括と次への備え」と題して講演。感染防止の努力はこれからも重要で、新たなパンデミックを見据える必要性も強調した。要旨を紹介する。

 パンデミックについて、5月5日に世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言の終了を発表した。発生当初はこれほどの大流行になるとは専門家も予想していなかった。2020年の流行初期は感染対策も分からない、未知の状況だった。国内では医療提供体制も検査体制も不十分で、マスクなどの衛生材料も足りず、人々は不安を覚えていた。

 重症化率を見ると、20年の第1波の5・13%から次第に低下し、21年の第5波では0・42%まで減った。低下の要因はウイルスの弱毒化とよく言われるが、有効なワクチンの供給、感染防止策の向上など複数の要因が絡んでいる。繰り返し襲来した感染の波で、集団免疫が得られたことも大きいだろう。

 ただ、「ウイルスが弱くなったから大丈夫」とは言えない。若い人には風邪みたいなものだとしても、高齢者や特定の病気を抱えた人には危険であり続ける。自分だけでなく、接する人のことも考えた感染防止の努力が不可欠だろう。

 また「後遺症」も課題として残る。米国では後遺症で働けない人が400万人以上いる。多くの若い人が働けないことは経済的損失でもある。ウイルスの変異につれて後遺症も変化しており、いまだに予断を許さない状況だ。

 今世紀は次々と感染症の大流行が起きている。パンデミックには人口増加と密集や、急速な人と物の移動、温暖化など多くの要因が絡む。自然災害とも言え、次のパンデミックは遠からず訪れるだろう。今回実行された対策や政策を全て検証し、世界レベルの組織と体制で立ち向かう必要がある。

(佐貫公哉)