旧ソ連が残した大量の核兵器を巡るウクライナとロシアの交渉が頓挫した1993年春、ウクライナの将来を左右する大きな転機が訪れた。同年1月20日に米ホワイトハウス入りした民主党のクリントン政権が、対ウクライナ政策のかじ取りを変え始めたのだ。

 同20日正午まで権力の座にあった共和党のブッシュ(父)政権は、ウクライナに最大で約5千発あった核弾頭をロシアに即時移送することに固執した。核兵器の拡散こそが、冷戦後の「重大脅威」と想定したからだ。

 ▽視線と本音

 そのため91年末のソ連崩壊で唯一無二の存在...