いつも心の中には海があった。部屋いっぱいに広がるキャンバスは三上真穂(24)の体よりずっと大きい。暗い青の中に原色が散り、打ち寄せる波が描き込まれている。「地元の、種差海岸の海です」と穏やかな声で話す。美術大の卒業制作として、自身の心象風景を描いた絵には「洞然」と名付けた。

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 幼い頃から、学校など特定の場面になると話すことができなくなる「場面緘黙(かんもく)」と向き合う中、いつも心を癒やしてくれたのが海だった。

 ▽暗 闇

 話せなく...