第一章 目利き(一)

 余寒の道を早足で歩く。

 朧(おぼろ)な春の月も今夜はよほど冷えてか、鬱(う)金(こん)色に澄んでいる。川波までが冴えて光って提灯要らず、恋真っ盛りの猫ども...