政府は高速道路の料金徴収期限を50年延ばし、2115年までとする。老朽化施設の更新などに収入を充てるためだ。いわば「永久有料」になるとも言える。約束した無料開放が遠のく理由を国民に十分説明し、理解を得る努力をすべきだ。
有料道路は借金で造り、償還後は無料にするのが大前提。2005年の道路公団民営化に伴い政府は、料金徴収は50年までとし、その後は無料化すると再確認した。だが12年の中央自動車道笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故を受け、老朽化対策を目的に徴収期限を65年に延長していた。今国会でこれを再延長する改正法が成立した。
橋の崩落などが相次いだ1980年代の米国のように、橋や高架道路といったコンクリート構造物の老朽化は広く知られた事実だった。にもかかわらず民営化では「更新費用の確保」のテーマには踏み込まなかった。
政治主導による民営化の成果として、早期の無料開放を打ち出したかったからだと分析できる。政府は今回、永久有料ではなく、50年もの延長を選択。その要因は二つある。
一つは、行政の手続きだ。民営化の際に、法律に基づき設置した「道路関係4公団民営化推進委員会」が議論した末に、無料開放の結論を打ち出した。それを覆すならば、同程度の格の組織で話し合わなければならない、という判断があった。
もう一つは、固定資産税の課税がある。無料開放後は国の管理になるのが前提なので、高速道路からは徴収していない。永久有料にすると、その後に高速道路から徴収するかどうかを整理する必要があった。
2115年までの老朽化に伴う改修費は、計6710キロを対象に総額8兆3千億円になると国土交通省は試算する。今後は一定期間ごとに、この中から更新区間を選んで計画を策定、事業化する。
この事業の透明性を確保するため、更新計画について第三者の専門家らによる組織が、更新の手法や費用が適正かどうかを点検し、結果を公表するよう提案する。
老朽化は全ての社会インフラに共通する課題だ。橋やトンネルなどの点検のため、ロボットやドローンなど新技術を積極的に導入する。それによって悪くなる前から計画的に修繕・更新する「予防保全」のノウハウを構築し、他のインフラ更新の手本としたい。
今後の料金制度は、地域活性化、少子高齢社会への対応の観点から、地域にメリットがある制度設計を求めたい。
利用者の目的に合わせて工夫するのはどうか。現在の深夜や休日の割引だけでなく、都市から地方のリモートワーク先や二地域居住先への移動について自治体と協力して割引する。地方への居住を促す政策としても使えるはずだ。
地方では人口減少が前提となるだけに、中核の都市とその周辺地域とで形成する「地域生活圏」などの中での連携を促すことが不可欠だ。そのため、生活圏内での移動の料金を低くする方策も考えられる。
都市部では、普及した自動料金収受システム(ETC)を活用し、時間帯に応じて値段が異なる「ロードプライシング」を適用する。東京五輪の交通対策として有効性は実証済みだ。国民の声を聴き、使いやすい料金体系を目指すべきである。