同性婚を認めない現行法制の違憲性が問われ、2019年に全国5地裁に提起された訴訟の一審判決が出そろった。5月末の名古屋地裁は憲法の2規定に違反する二重の「違憲」と断じ、8日の福岡地裁は「違憲状態」とした。
5判決は、21年の札幌地裁を含め「違憲」2件、22年の東京地裁を合わせ「違憲状態」2件、同年大阪地裁の「合憲」と分かれたが、大阪判決でさえ同性カップルには「望み通りに婚姻できない重大な影響が生じている」と認め、将来「違憲となる可能性」に言及した。
強弱はあっても、現行制度の不備を指摘し、立法措置を促した点で、司法の姿勢は一致していると言えよう。
共同通信が5月の憲法記念日を前にまとめた世論調査では、71%が同性婚を「認めた方がよい」と回答した。同性カップルの関係を地方自治体レベルで証明するパートナーシップ制度は、8年足らずの間に320を超す自治体に拡大した。
社会の変化を司法が受け止める一方、立法府は鈍感過ぎると言わざるを得ない。同性婚法制化に向けた議論は不可避であり、速やかに本格化させるべきだ。司法の最終判断を待ってはならない。
名古屋判決が違反を認定した憲法の規定は、法の下の平等を保障する14条と家族に関する法律について個人の尊厳に立脚した制定を求める24条2項だ。
2規定について「異性カップルに法律婚制度を設け、同性カップルには保護する枠組みすら与えないのは国会の裁量の範囲を超える」と判断した。
とりわけ、24条2項について「伝統的家族観が唯一絶対ではなくなっている。累計的に膨大な数の同性カップルが、重大な人格的利益の享受を妨げられている」とし「現状を放置することは、もはや『個人の尊厳』に照らして合理性を欠くに至っている」と断じた。
初の違憲判断だった札幌判決は、14条違反に絞って「違憲」としたが、名古屋判決はさらに踏み込んだと言えるだろう。
いずれも国の賠償責任は否定したが、これは国家賠償は判例上、違反状態を長年放置するといった場合にしか認められないためだ。国は逆に、いずれ賠償が認められる可能性があると肝に銘じるべきだろう。
「違憲状態」とした福岡判決は、東京判決とほぼ同旨で「24条2項に反する状態にあるが、立法府の今後の検討に委ねることが不合理とまでは言えない」として違憲と断じるのを避けた。世界で同性婚を認める国・地域は30を超す。先進7カ国(G7)の中で、同性カップルを法的に保護する仕組みがないのは日本だけだ。5月のG7首脳会議(広島サミット)直前には、かつて与野党が合意しながら保守派の反対で棚上げされたLGBTなど性的少数者への理解増進法案に、与党が手を加え、国会提出した。
議長国としての体面を守るための動き。保守派への配慮から文言が後退したとの批判も出ているのに、わずかな審議だけで成立する見通しだ。そんなありさまで同性婚などの議論に進めるのか。
「全ての人々が性的指向などに関係なく、差別のない生活を享受できる社会を実現する」
広島サミット首脳声明の一節だ。岸田文雄首相はリーダーシップを発揮しなければならない。