第一章 目利き(十)

 大番頭は喉を鳴らし、膝を前に進めて主の惣右衛門に耳打ちをした。惣右衛門の口からは細い煙が吐き出されるのみだ。寅蔵は煙草の味も臭いも好きではないが...