調理師の三阪先生に聞く卵の節約レシピ
調理師の三阪先生に聞く卵の節約レシピ

 「価格の優等生」と呼ばれる卵の価格が高く推移している。飼料代の値上がりに加え、冬場に頻発した鳥インフルエンザの感染により、国内1700万羽を超える鶏が殺処分されたため、需給の逼迫(ひっぱく)が価格を押し上げている。JA全農たまご(東京都)によると鶏卵の6月の平均卸売価格(東京地区、Mサイズ基準値)が1キロ当たり349円で、昨年の7月平均の213円から約1.5倍を超す。料理のつなぎで欠かせない卵の値上がりに頭を悩ませている人も多いはずだ。卵を節約しながらおいしい料理を作ることができるのか。料理の専門家にレシピを紹介してもらった。(Sデジ編集部・林李奈)

 頼ったのは、山陰中央新報文化センター料理教室で家庭料理を指導する三阪和栄さん(58)。卵を節約したチキン南蛮、卵を使わないホットケーキの2つのレシピについて教えてもらった。

山陰中央新報の文化センターで料理教室を行っている三阪和栄先生

<チキン南蛮>

 卵を使った料理で、記者が好きな料理はチキン南蛮。衣やタルタルソースに卵を使用する。通常は片栗粉と卵を混ぜて衣を作るが、三阪さんによると、小麦粉と水だけでも作れるという。片栗粉を小麦粉にすることで、卵が持つ保水性に近づける。タルタルソースも通常は卵を2個使用するところを1つの分量に減らし、具材を増やすことでおいしさを保てるようだ。レシピを教えてもらい、作ってみた。

10個入りパックで343円だった卵。昨年の1.5倍以上の値段となった。


レシピは次の通り

卵使用料を1個に節約チキン南蛮

材料(2人分)

【鶏天】
・鶏胸肉 300グラム 
・塩 適量
・酒 適量
・小麦粉 大さじ4杯
・水 大さじ4杯

【甘酢】
・砂糖 大さじ2
・ポン酢 50ミリリットル

【タルタルソース】
 ・卵 1個 
 ・ピクルス 4つ
 ・パセリ 適量
 ・ピクルスの汁 適量
 ・タマネギ 10グラム 
 ・マヨネーズ 大さじ4杯
 ・こしょう 適量

【鶏天作り方】

1 鶏胸肉を8等分にそぎ切りして、下味を付けるため塩、酒をもみ込んでおく

2 鶏肉の衣を作り、肉を漬け込んでおく

鶏胸肉300グラムをそぎ切りし酒と塩を揉み込み下味をつける

〈ポイント!〉

 通常は、卵1個に片栗粉100グラムを混ぜ合わせた衣を作るが、小麦粉大さじ4杯と同量の水を混ぜ合わせて衣を作る。片栗粉ではなく小麦粉を使うことで鶏胸肉がしっとり仕上がる。

小麦粉と水を入れた衣(左)と片栗粉と卵を入れた衣(右)。色合いは全く違う

 

3 衣を付けた鶏肉を油で揚げる

【甘酢作り方】
1 ポン酢50ミリリットルと砂糖大さじ4杯を混ぜ合わせ、甘酢を作り、揚げた鶏肉に漬け込む

【卵節約タルタルソース作り方】
1 卵1個をゆで卵にする
2 タマネギをみじん切りにし水にさらし、辛みを取る
3 パセリ、ピクルスを刻む
4 ボウルの中にゆで卵を入れつぶし2、3でつくったタマネギとパセリ、ピクルスを入れてマヨネーズ、ピクルスの漬け汁を入れて混ぜる

ゆで卵1個を潰してまぜてタルタルソースを作る。1個でも十分おいしくなる

 比較のため、通常のレシピでもつくり、「節約版」と食べ比べてみた。

 節約版は、衣がしっかりしていないのではと不安だったが、口に入れると、衣がしっかりしていてサクサクしていた。卵を使用していなくても、かみしめるとしっかり鶏胸肉の味が伝わっておいしい。通常版は、ツルっとした衣でしっとりとした味わいがあるが、おいしさに大きな変わりはない。タルタルソースは、卵以外に入れたパセリやタマネギと鶏肉の相性が良い。卵の少なさは気にならず、逆に減らした方がおいしいと感じた。

卵を2個使用したチキン南蛮(左)と節約チキン南蛮(右)。卵を節約しても見た目に大きな違いはない

 

<白のもちもちホットケーキ>

 次はホットケーキ。さすがに卵がないと無理だろうと思ったが、三阪さんは「ヨーグルトを使うといつもと違うもちもち食感のホットケーキになります」と自信たっぷりに話した。本当にできるのか。レシピを紹介してもらい、作ってみた。

 

【材料】
・ホットケーキミックス 150グラム 
・プレーンヨーグルト 100グラム 
・バター ひとかけら 
・メープルシロップ 好きなだけ

<作り方>
1 ボウルにヨーグルトを入れホットケーキミックスを加え混ぜ合わせる

2 フライパンに薄く油を入れフライパンを中火で加熱して生地を流し入れ、弱火にして表面に小さな穴が開いてきたら裏返し両面を焼く

3 皿に盛り付け、バターとメープルシロップをかける

卵を混ぜた生地(左)とヨーグルトを混ぜた生地(右)。色に明確な差がある。仕上がりの違いが気になるところだ

 卵ありの通常のホットケーキも作り、食べ比べてみた。

 卵を使わないホットケーキは初めて食べる。どんな味なのか想像がつかなかったが、一口食べて驚いた。きちんとホットケーキになっている。卵アレルギーがある人でもこれなら食べられそうだ。白いたい焼きのようなもちもちっとした生地に酸味が効いており、さっぱり食べられるので、夏にぴったりと感じた。卵のホットケーキも「いつもの安定感」でおいしかったが、ヨーグルトを使ったものと比べて逆に物足りなさを感じた。ホットケーキにヨーグルトは合う。意外な発見だった。

通常のホットケーキ(左)とヨーグルトホットケーキ(右)。まん丸のホットケーキがおいしそうだ

 卵はそれ自体がおいしく、栄養も豊富で、さまざまな食材とも合うため、何にも代えがたい食べ物であることは論をまたない。しかし、卵の価格が高くなっている今、料理を少し工夫してみることで、節約はもちろん、食材同士の意外なコラボレーションも生まれるかもしれない。物価高を逆手に取り、この機会に料理の幅を広げていきたい。