税制の将来が見えない。将来世代への負担先送りを認めたような内容ではないか。政府税制調査会が4年ぶりにまとめた中期答申のことだ。
政府税調は多くの審議会の中でも格が高く、首相に直接意見を述べる機関だが、それにしては物足りない内容だ。税制は「公平、中立、簡素」が基本とされる。中期答申はそれに加え「十分性」を重視する姿勢を打ち出した。財政全体の持続性や、高齢化による医療費や年金給付の増大を考えればもっともな指摘だ。しかし具体策がない。十分な税収を確保する手だてを語らないまま、将来への負担先送りを認めていいのか。
毎年の税制改正は与党が決め、政府税調は本来あるべき税の姿を考える。こう役割分担しているが、時には両者の間に緊張が生じる。それを覚悟で税制の将来像を示すことが、政府税調には求められているはずだ。
岸田文雄首相は就任前、消費税率について「10年程度は上げることを考えない」と述べた。実際、現政権では消費税増税は封印されている。
だが政府税調は伝統的に、消費税を深く議論してきた。小泉純一郎氏は首相在任時に「自分が首相の間は消費税率を引き上げない」と繰り返し語った。しかし政府税調は、消費税率を「将来は2けたにする必要がある」と中期答申にはっきり書いて、首相に提出した。
少子高齢化は加速している。幅広い国民に負担を強いる消費税増税に政治家は常に及び腰だ。だからこそ政府税調が踏み込んで語る必要がある。250ページを超える今回の中間答申から、その気概が伝わってこないのが残念でならない。
多くの租税特別措置は個別の産業にとって重要な意味がある。陳情を受けた政治家は、票に直結するから懸命になる。だが税収を支える消費税、法人税、所得税の基幹税をそれと同列にとらえては困る。特定の企業や業界ではなく、国民全体の暮らしや仕事を変える力があるからだ。
中期答申では、フリーランスの増加などを踏まえ「働き方に中立的な所得課税」の検討を求めた。サラリーマンに手厚い所得控除の見直しや、長年勤続すれば有利になる退職金への課税のあり方も検討課題とした。終身雇用制とは異なる働き方を広げ、転職などを選択肢にしやすい税制を真剣に考えてほしい。
人口減少社会では、社会保障の水準を切り下げない限り1人当たりの税負担は重くなる。経済成長による税収の確保は確かに重要だ。しかし、景気循環にあらがって成長を続けるのは容易ではない。
答申は、今後の税制に触れ、「世代間でのバランスの確保」を常に点検するよう求めた。国債発行をできるだけ抑え、将来世代に持ち越す借金の元利払いが膨らまないようにするには、税収が重要な役割を果たす。
答申は、これまでの法人税減税が投資拡大に本当に効果があったか、検証する作業を求めた。効果が小さい企業減税を廃止するのは当然だ。「成長加速」を唱え、いたずらに減税を繰り返す手法を問い直さねばならない。
防衛費、少子化対策による歳出拡大は著しい。それに見合った財源の真剣な検討を首相は避け続けている。政府税調まで過剰に政権に配慮すれば税の未来が見えなくなる。議論を恐れず自らの役割を果たしてほしい。













