試作型の小型電動推進機を搭載した遊覧船を操縦する船頭=松江市北堀町
試作型の小型電動推進機を搭載した遊覧船を操縦する船頭=松江市北堀町

 脱炭素社会実現の一歩として、松江城周辺の堀を巡る松江堀川遊覧船の船外機の電動化を、松江市と運航主体の市観光振興公社、大手自動車メーカー・ホンダが共同で進めている。同社が試作した小型電動推進機を使った国内初の実証実験を8月に始め、二酸化炭素(CO2)の排出削減や静音性の向上につなげる。(佐々木一全)

 

 電動推進機は現在のガソリン船外機に比べて一回り小さく、年間47トン排出されるCO2をゼロにできるほか、振動を6割低減。1周約3・7キロの遊覧船コースを、フル充電したバッテリーで2周できる。

 松江市と観光振興公社は10年以上前から船外機の電動化を模索。近年の脱炭素化の動きを踏まえ2021年にホンダに相談した。同社は電動推進機の開発を進めており、実証実験の場として松江を選んだ。

 実験では電動推進機を搭載した1隻を使い、船頭の操縦や船内での会話、バッテリー交換などについて運航への影響を調べる。26日にあった報道向け試乗会では、船体の揺れが少なく、船頭の説明にマイクが要らないほど静かに運航。上定昭仁市長は「松江の脱炭素化の象徴となりうる取り組みだ」と期待し、ホンダの鶴薗圭介・パワープロダクツ事業統括部長は「検証を重ね、実用化に向けたポジティブな議論をしていく」と力を込めた。

 当面は観光振興公社やホンダの関係者らの乗船に限るが、一般客を乗せる営業運航での利用も検討する。