カウボーイ・ジャンキーズがベルベット・アンダーグラウンドの曲をカバーした「スウィート・ジェーン」(日本発売は1989年)とセットで思い出すのは、同じ頃にこの曲をカバーしたトゥー・ナイス・ガールズのバージョンだ。ただ、単純なカバーではなく、黒人女性シンガー・ソングライター、ジョーン・アーマトレイディングの「ラブ・アンド・アフェクション」という曲を組み合わせた「スイート・ジェーン(ウィズ・アフェクション)」。原曲の発表(1970年)から20年近くたって世に出た二つのカバー。カウボーイ・ジャンキーズ版も魅力的だし、こちらも独特の雰囲気を持っていて好きだ。
トゥー(two)を名乗るものの2人ではなく、女性シンガー・ソングライターの3人組であるトゥー・ナイス・ガールズは米テキサス州オースティン出身。2人組でスタートした時に付けたグループ名をメンバーが1人増えてからもそのままにしたようだ。1989年に、あの「ラフ・トレード」レーベルから出したデビュー・アルバム「2・nice・girls」に「スイート・ジェーン(ウィズ・アフェクション)」は収録されている。
演奏は控えめに、アカペラに近いかたちで「スイート・ジェーン」を歌いながら、「ラブ・アンド・アフェクション」のさびを絡ませていく流れがユニーク。3人が織りなす情感豊かなコーラスも聴きどころだ。最後にメンバー(?)の拍手が聞こえてくるライブ感もいい。87年にオースティンで催されたルー・リード(ベルベット・アンダーグラウンドのリーダー)のカバー曲コンテストで賞を得たという。
この曲だけではない。アコースティックなフォーク、ロックを聴かせる「2・nice・girls」も好アルバム。メンバーのグレッチェン・フィリップスとキャシー・コーニロフがオーソドックスで親しみやすいフォークを演奏する一方、「スイート・ジェーン」でリード・ボーカルを取ったローリー・フリーラブの自作曲はサイケな空気も漂わせ、とんがった印象。3人それぞれの持ち味が発揮され、飽きのこないアルバムだ。

このアルバムの後に脱退したローリー・フリーラブが91年にリリースしたソロアルバム「真実の詩(うた)」も深い魅力を放つ作品だった。(洋)