ガソリン、軽油などの価格を抑制する政府の補助金縮小が6月から始まり、ガソリン価格が上昇している。補助金は9月末で終了する予定だが、主要産油国は減産を続けており、原油が大きく値下がりする見通しは立っていない。
補助金による価格抑制策はマイカーを多用する地方の暮らしや運送事業を支えるのに役立ってきた。原油価格の動き次第では補助金延長を求める意見が出るだろう。だが予算措置は既に6兆円に上っている。本来、市場で決まる価格に政府が介入する手法への疑問もある。現行の仕組みを安易に延長することはできない。
資源価格は高止まりしている。補助金の効果や役割をあらためて見直し、生活弱者や中小企業に役立つ支援を検討する必要がある。一律に補助金をばらまき続けるのではなく、ガソリン関連の減税も選択肢に、腰の据わった資源高対策を考える時期に来ている。
ロシアのウクライナ侵攻とその後のロシア制裁に伴い、資源価格が高騰し、日本でもガソリン価格が急上昇した。このため政府は価格の激変緩和を目的に、石油元売り各社に補助金を給付する対策を、2022年1月から始めた。
抑制策をとらなかった場合の小売価格と、あらかじめ決めた基準価格との差額を補助金で埋める方式とし、同4月からは基準価格を1リットル当たり168円に固定してきた。
経済産業省は今年6月から補助金を縮小し、7月末のガソリン価格は同176円を超え、15年ぶりの高値をつけた。
巨額の補助金には批判もある。価格を決まった水準に決めれば、価格上昇による消費抑制という省エネ効果は生まれない。化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を促すためにも、補助金は不要との意見もある。
だが、ニッセイ基礎研究所によると、都道府県庁がある都市の年間のガソリン支出額(世帯平均)は、最大の山口市が9万4千円、最少は東京23区の1万7千円。マイカーに頼る地方都市と、公共交通機関がある大都市との差は大きい。
トラック運送を担っている会社の大半は中小企業だ。冬になれば、寒冷地で灯油の需要も増える。補助金を打ち切る場合には、地方の暮らしと中小企業への影響を十分に考慮し、代替策を検討するべきではないか。自治体の意見にも耳を傾けてもらいたい。
政府はガソリン補助金がどの程度の負担軽減につながったのか、地域別や業種別に示してほしい。どの所得層に恩恵が大きかったのか、調査する必要もある。1年半余りにわたる巨額補助金であり、その効果を多面的に分析するのは当然だ。
ガソリンは「税金のかたまり」と呼ばれる。揮発油税、石油石炭税、地球温暖化対策税などが課税されているからだ。現行の補助金は価格の激変緩和のための短期的な対応のはずだ。
だが、ウクライナでの戦争は先が見えず、中東産油国を主導するサウジアラビアの減産姿勢も変わる兆しがない。資源高は今後も続くだろう。
エネルギー情勢の変化を踏まえた中長期的な対策を税制を含めて検討するべきではないか。財政事情を考えれば対策の規模縮小もやむを得ない。政権の人気取りのためだけに、漫然と補助金を延長してはならない。