竹を組んでつるした網の中に、蒸した亀治米を入れる野津裕司さん(右)と戸谷豪良さん=雲南市大東町須賀
竹を組んでつるした網の中に、蒸した亀治米を入れる野津裕司さん(右)と戸谷豪良さん=雲南市大東町須賀

 安来市の地域おこしグループと松江市の企業が安来市荒島地区発祥のコメ「亀(かめ)治(じ)米」で天然こうじを造り、みそや酒、チーズといった商品開発を目指す。天然こうじ菌はスサノオノミコトゆかりの須我神社(雲南市大東町須賀)の奥宮近くの山中で採取する。ヤマタノオロチを酔わせた「八塩折之酒(やしおりのさけ)」を醸した出雲地方の天然こうじ菌と銘打ち訴求力を高める考えだ。(桝井映志)

 地域おこしグループ「結の里たーら」(安来市広瀬町奥田原)の戸谷豪良代表(57)と、農業などを手がけるフローネ(松江市八雲町平原)の野津裕司代表取締役(58)が発案した。

 亀治米は明治初期に荒島地区の篤農家が選抜育種した品種で、いもち病に強くて収量が多く昭和初期まで西日本各地で栽培された。肥料や農薬を使わない自然栽培に向き、天然こうじ造りにも適すとして近年、再評価され、島根県内外で栽培例が増えている。

 2人は、天然こうじを使った商品開発を構想する中で、亀治米を知った。戸谷さんが、荒島地区で栽培していた農家に種もみを分けてもらって昨年、栽培を始め、野津さんも手伝う。

 天然こうじ菌の採取場所としてストーリー性を高められる須我神社に着目。他品種のコメで試して適地4カ所を選び7月24日から今月4日にかけ、須我神社の奥宮への登山道途中に湧く「禊水(みそぎみず)」という水で亀治米を蒸し、山中に竹を組んでつるした網の中に入れ、採取した。今後、培養を進める。

 もともと2人が想定するみそやチーズのほか、蔵元も巻き込んでの酒造りも思い描く。野津さんは「八塩折之酒を再現したい」と意気込む。最近、亀治米を知った高松市のコメ販売業者から商談が舞い込んだという戸谷さんは「栽培面積を増やしたい」と亀治米の可能性に手応えを口にした。