住宅の床上浸水などで出た大量の災害ごみ。秋田の大雨から1カ月たつが、仮置き場に積まれたままだ=14日午後、秋田市
住宅の床上浸水などで出た大量の災害ごみ。秋田の大雨から1カ月たつが、仮置き場に積まれたままだ=14日午後、秋田市

 近畿を縦断するように北上した台風7号のように、今年も全国各地で豪雨による災害が相次いでいる。15日の鳥取県内をはじめ、線状降水帯が頻繁に発生し、過去最多の雨量を記録するケースも目立っている。これらの要因に挙げられるのが、地球温暖化だと言えるだろう。

 国連のグテレス事務総長は7月末に「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と警告した。その証拠に7月の世界の平均気温は過去最高を記録した。気温上昇による台風の大型化、一度に降る雨の量が増える傾向が続くことを前提に、水害防止対策を強化しなければならない。

 台風7号の対応では、台風が来る2日ぐらい前から、対応を時系列で定めている「タイムライン」の運用を始めた自治体もある。早め早めに避難所を開設し、高齢者らの避難を呼びかけるという予防的な対応を普及させることが不可欠になる。

 東海道・山陽新幹線や在来線の一部区間では15日、事前に運休を知らせる「計画運休」を実施した。この結果、突然の運転取りやめによる混乱は回避できたと評価できる。

 一方、東海道・山陽新幹線は16日、静岡県内の豪雨のため半日程度の運転見合わせを余儀なくされた。土砂崩れや、盛り土区間での路盤の崩壊などを警戒してのことであり、安全確保のためやむを得ない措置だろう。

 ただ、今後は温暖化に伴って豪雨の増加も想定される。突然の運休を増やさないためにも、さらなる土砂崩れの防止対策や路盤強化策の検討も必要だ。

 秋田県で7月に記録的な大雨があり、秋田市で「内水氾濫」が発生して床上浸水する住宅が相次いだ。内水氾濫とは、下水道や水路の排水能力を超える豪雨のため低い場所に雨がたまることを意味する。河川の堤防が切れて浸水する「外水氾濫」とは対策が異なる。

 国土交通省によると、2020年までの10年間の水害被害額は約4兆2千億円あり、内水氾濫はうち3割を占める。東京都では被害総額の8割超が内水氾濫だ。都市部では、農地のように雨水を地下に浸透させる土地が少ないため、氾濫の被害が増える傾向があると分析できる。

 対策としては、下水道を更新して排水能力を高めることや、雨水を地下に一時的にためる施設を造るハード対策が中心となる。公園や緑地を整備して地下に浸透させる量を増やす方法もある。ただ、これらの対策には多くの時間や予算がかかることが難点だ。

 このため、自衛策も重要となる。まずは内水氾濫によって浸水する地域を示す自治体のハザードマップを見て、自分が住んだり働いたりする地域が浸水しやすい場所かどうかを把握することから始める。未策定の自治体に対しては、早期の作成を要望する。

 次に水に漬かっては困る非常時用の発電機やコンピューターなどは、地下や1階に置かないようにする。地下街や地下室に水が浸入しないように止水板や土のうを備え、緊急時に備えた訓練も欠かせない。車を運転する際に備え、アンダーパスのように水がたまりやすい場所の情報を集めておくことも必要だ。

 内水氾濫の対策に時間がかかる場所については、土地をかさ上げして安全度を高めて住むようにする。それも難しい場所は居住を避けることも選択肢の一つになるだろう。