閑散とした土産物店。閑散期の6、7月は土曜・休日のみの営業に切り替えた=松江市佐草町、「縁結び 八重」
閑散とした土産物店。閑散期の6、7月は土曜・休日のみの営業に切り替えた=松江市佐草町、「縁結び 八重」

 新型コロナウイルスの影響で土産物を買わず周遊も控える旅行者が目立ち、山陰両県の土産物店が苦境に立たされている。入り込み客数は回復しつつあるが「旅行した」と大っぴらに言えない空気から土産物の売れ行きは鈍いまま。島根県のクーポン券も宿泊施設周辺で使われるのか、土産物店に恩恵が薄く「期待外れ」と恨み節も聞こえる。 (報道部・広木優弥)

 松江城に近い松江市北堀町で土産物販売・飲食店を営む塩見茶舗の錦織雄一社長(53)は「状況は昨年より厳しい」と嘆く。

 大型連休中、松江城周辺の入り込み客数は1万422人で、コロナ禍前の2019年同期の約25%。これに対し、店の売り上げは同期比15%ほど。「旅行がばれるから土産を買わない」と、はっきり言う客もいた。

 コロナ禍長期化に加え、お金が落ちにくい観光スタイルは、じわじわと土産物店に打撃を与えている。

 八重垣神社(松江市佐草町)隣にある「縁結び 八重」の店長、佐草優駿さん(30)は「売り上げが280円の日もある」と力なく笑う。ワクチン接種の遅れなどで収束が見通せず売り上げ回復が見込めない。「数年店を休み、蓄えで生活することも考える」と切実だ。

 水木しげるロード(境港市)の店も悩みは同じ。家族経営の小さな店が多く、境港観光協会の古橋剛事務局長は「営業日や営業時間を縮小する店が増えた。長期化すると店じまいも考えるだろう」と案じる。

 とりわけ島根県側は落胆が大きい。消費喚起のため県が今春、打ち出した「しまねっこクーポン」に肩すかしを食らったからだ。

 クーポンは県内在住で県内に宿泊した人に配られ、地元での買い物を促す。ところが、出雲大社近くの土産物店「みつばち工房 花の道」(出雲市大社町杵築南)の田中辰哉店長は「ほとんど見かけない。周りも同様」と話す。

 鳥取県のクーポンと違い、量販店やコンビニでも使えるためだとみられる。塩見茶舗の錦織社長は「宿泊施設付近で使われるようだ。期待していたためショック。もっと観光地で人や金が回る施策を」と望む。

 島根県観光振興課の永富聡国際観光推進室長によると、使い先が幅広いのは「県内全体に好影響となるように」との意図がある。使われ方は「集計中でコメントは難しい」という。