身ぶり手ぶりを交えながら、記者の質問に答える細田博之衆院議長=東京・永田町、衆院議長公邸
身ぶり手ぶりを交えながら、記者の質問に答える細田博之衆院議長=東京・永田町、衆院議長公邸

 細田博之衆院議長(79)=島根1区、11期=が13日、東京都内で記者会見を開いた。世界平和統一家庭連合(旧統一協会)との関係について「問題はない」と強調。2019年10月に旧統一教会関連の会議に出席した際に「会議の内容を安倍(晋三)首相に早速ご報告したい」とあいさつしたことは「安倍首相に伝えると言ったが、伝えていない。ちょっとリップサービスで申し上げただけで報告もしていない」と述べた。

 議長辞任の理由は「(体調により)予期せず議事対応が困難になるなど公務に支障をきたす可能性がある。辞めたくて辞める訳ではない」と説明。次期衆院選の立候補については「多少よたよたしているが、議員としての活動はできると思っている。これまで続けてきた33年間の議員の実績は非常に厚いものがあり、特に地方のためになるとやってきた。地元の要請を受けて頑張っていきたい」と意欲を示した。

 記者会見での細田氏の詳しい発言は次の通り。

 ◇◇◇

 細田議長 任期途中だが、このような形で議長を辞任したいということは、誠に残念。皆さんに申し訳ないと思っている。心からおわび申し上げる。本日、臨時国会の召集が正式に決まり、なるべく早いタイミングで説明させていただきたいと思い、皆さんにお集まりいただいた。

 7月に、隠岐の島を3日間巡った時に熱中症になった。早期治療を行った。実際は脳梗塞の初期だった。脳梗塞の血栓溶解薬の処方と、脳内に血行をよくする金属製のステントを設置した。手術は成功し、問題なく、普通に活動していいとのこと。

 しかし、過去に前立腺肥大のレーザー手術をしていた。尿が出なくなる男性特有の病気。手術は2年ほど前。血栓の薬を使うと、過去の傷に穴があき、また血が出る。ぼうこう内に血がたまり、ぼうこう内の出血を洗わないといけない事態が発生する。結構大変で、突然、尿が止まり、ぼうこう内を洗わないといけない。予期しない議事対応が困難になり、公務に支障を来す可能性がある。

 医者に相談し、(その時は)3日休めばいいと言われたが、議長の仕事は3日休むということにはならない。

 何とか薬を止めて出血が出ないようにと、いろいろ議論したが、無理じゃないかと。例えば、天皇陛下をお迎えする開会式、代表質問や補正予算審議、議長としての重要な公務が予定される中、国会運営が停滞することは避けなければならない。ご迷惑をかけてはならない。わたしの責任で辞任しようと決めた。医者も了解した。

 北海道であった全国豊かな海づくり大会に出席したり、いろいろな催しに出ている。薬を調整しながら、何とかできた。

 国会議員として活動できるかどうかについては(仮に症状が出たとして)1日か2日は仕事が止まるが、3日目以降は大丈夫。国会議員として、地方交通の問題、地域おこしのための組合設置、過疎対策、さまざまな仕事に従事してきた。原発、エネルギー、産業問題などに非常に強く関与してきた。そういった仕事をしっかりやっていきたい。私以外の人が簡単にできるようなことではない。森林環境税を森林のために使うとか。一国会議員として国政に携わっていきたい。

記者会見を開き、衆院議長辞任の理由を説明する細田博之衆院議員=東京・永田町、衆院議長公邸


(Q)国会議員を続け、次期衆院選に立候補するのか。議長を辞めざるを得ない体調不良で、議員続投は可能か。国会議員の職責を甘く見ていると有権者に思われかねない。

 細田議長 脳梗塞がさらにひどくなることがあれば別だが、そうではない。ぼうこう炎を発症し、血液が出るのを止めるのに1~2日。いわば持病を抱えたようなものだが、この程度のことは仕事の上で支障はないので大丈夫だ。残念だが、私も辞めたくて辞めるわけではない。

(Q)政府が本日、旧統一教会の解散命令を請求した。そのような団体と過去に関係があったことをどう受け止めているか。指摘されながら記者会見を避けてきた理由は。

 細田議長 安倍晋三元首相が殺されたのと、旧統一教会の問題は全く関係がない。そのことは皆さんご存じだと思う。しかし、たまたま山上徹也被告が暗殺してしまった。本当に悲しいこと。私はいつも悲しんでいる。わたしはずっとうつ状態。なぜ安倍さんが死ななきゃならないのか。7年間も支えてきた私が、どうしてここでまだ苦労しなければならないのかと、つくづく考えてきた。ずっとうつ状態だといっても、おかしくない状態。
 他方、旧統一教会問題はそれぞれ問題があったんじゃないかとおっしゃる方がいるが、そんな問題はない。いろんなうわさがあるとは聞いた。うわさはあるが、そういうことは一切ない。

(Q)確認だが(教団と)関係があったのは事実か。

 細田議長 内容は文書を配ってる。1枚紙。その中で、一番怪しいと言われたのは、名古屋市内での会議でのあいさつ。米国の国会議員も出るということで、確かに出席した。私としては「安倍元首相にもよろしく申します」と言ったが、安倍総理には伝えていない。第一、伝える必要もない。ちょっとサービスで申し上げただけ。安倍総理には報告もしていない。実質はなにもない。

(Q)まず抗議から。記者会見に制限をかけた。昨今、記者会見のあり方が問われている。議長はこれまでも会見していない。最後も制約をかけた。認識はどうか。旧統一教会との関係に加え、セクハラ疑惑もある。立法府の長が疑惑を取り沙汰されていること自体、政治への信頼失墜につながる。認識はどうか。

 細田議長 まずセクハラについて言えば、これまで誰一人、こういうセクハラがあったという人はいない。ただ、あるかもしれない。反論はしていないが、裁判でしっかり対応していく。裁判で証明するしかない。あるかないか。
 セクハラはある意味で男性にとっても大変な問題。誰か被害者が訴えていると、3人でも5人でも被害者がいるぞとなる。それが大事なこと。どの新聞社も政党職員も誰一人、セクハラをされたという主張がない。従って(自分は)待っていざるを得ない。公判が始まり、訴状で誰が被害者なのか、どのようなセクハラを受けたかを聞きたいと思っている。セクハラはある意味で、男にとってもセクハラをしたと言われるのは大変な問題。本当にあったなら言ってほしい。それがない。1件もない。単なるうわさ話として言われていると思っている。
 会見の問題は、実は議長職は特別な職。私が抑えたということはない。衆院議会運営委員会の理事会で協議し、聞こうではないかと言われた。理事会できちんと発言について、その他も含めてしっかり説明し、各党からも手が挙がった。具体的な話もあった。それを越え、何十人、何百人に議長として説明する必要があると、議運ではそこまでの考えはなかった。議長でなくなればざっくばらんな話もできる。言いたいことは山ほどある。言いたいことも言われなかった。言わないことについてもご理解いただきたい。(セクハラ疑惑は)訴訟を起こしている。国政選挙について、介入(旧統一教会票を差配)したことはない。

(Q)言いたいことがあるなら記者会見をもっと早く開くべきではないか。自身の振るまいで、政治への信頼を失墜させたことをどう思うか。

 細田議長 そういう風に考えていない。残念だと思っている。どうして私が、セクハラ議長などと言われなければならないのか。心当たりがない。もっと説明したいが、訴訟で争っている。

(Q)旧統一教会の会議でなぜリップサービスをする必要があったのか。安倍元首相と教団の接点について、これまでどんな会話をしたのか。ご自身はどこから関係が始まったのか。政策に反映したことはないか。

 細田議長 安倍元首相と話したことは全くない。ただ(旧統一教会と)長い関係があったのは存じ上げている。安倍晋太郎先生や福田赳夫先生や、そういう流れがあることは知っている。つい、会議で余計なことを申し上げた。リップサービスで「安倍首相にも伝える」と言ったのは行き過ぎであったと思う。

(Q)セクハラ疑惑は名乗り出る人がいないと言ったが、上下関係など難しい中で言い出しにくい部分もある。

 細田議長 私はセクハラがないという前提で申し上げている。あったならあったと言っていただきたい。覚えがない。男性に対してセクハラがあったと言って週刊誌などが述べ立てるということは、男性に対するハラスメントではないか。男性は皆困るのではないか。女性も皆困るのではないか。訴訟をやりましょうというしかない。

(Q)次期衆院選に立候補する意向はあるか。

 細田議長 多少よたよたしているが、まだ議員としての活動はできると思っている。いつの選挙かにもよるが。2カ月後に選挙があるのか、2年後の任期切れなのか。そういった問題もある。私としてはこれまで続けてきた33年間の議員の実績というものは、非常に厚いものがあって、特に地方のためになることはやってきた。地元の要請を受けて頑張ってみたいと思っている。

(Q)地元からは体調不良を理由に議長を辞任する一方で次期衆院選に立候補することに対して「理屈が合わない」という声が上がっている。体調不良の中で議員を続け、次期衆院選に出馬することは県民の負託に応えられると考えるか。今回の説明で県民は納得すると思うか。

 細田議長 体調がこれから悪化するということになれば別だが、今の状況ではぼうこうの出血のコントロールできている。私は大病ではないと思っている。大病ではないが、議長としての職責の上では相当問題があると。それで開会式をサボりました、本会議をサボりましたということはあってはいけない。国会議員としての良心から退任するべきだということで、退任する。
 地元の課題はさまざまある。鉄道を維持すべきかどうか、地域おこしの関係で過疎対策をどうするか、離島対策をどうするかなどさまざまな課題がある。森林環境税もある。地方がおろそかになってはいけないという思いが非常に強い。あんまり簡単に人に任せて「はい、さようなら」という訳にはいかない。

(Q)細田議長は旧統一教会関連団体の会合への出席が8回あり、他の議員に比べて突出している。そもそもどういった経緯で教団と関係を持ったのか。

 細田議長 特別な関係はない。これまでも会合に出てくださいと言われれば出るということだ。

(Q)議長が清和政策研究会(現安倍派)の会長だった頃の話を伺いたい。2016年の参院選の比例代表で伊達忠一元議長が間に入り、旧統一教会からの票が初当選した宮島喜文氏(元職)に流れたという話を取材に対して宮島氏が答えている。その時は、清和政策研究会の会長だったし、伊達氏も宮島氏も清和政策研究会の方だ。票の差配、支持について議長は関わったのか。

 細田議長 私は一切関わっていない。

(Q)伊達氏が安倍元首相に支持をお願いしたという風に伝えられている。そのことを知らないのか。その過程で宮島氏に対して清和政策研究会の幹部から旧統一教会の施設を回るように指示があったという話があるが、知らなかったのか。

 細田議長、それも存じ上げない。実際に安倍元首相に言われたかどうかも、私は会長を代わっており、その段階で参院選の問題は関与していない。

(Q)細田議長が会長をしている時の話だ。

 細田議長 それは伊達さんにお願いしていた。

(Q)議長は今回の旧統一教会の解散命令請求について、賛同しているのか。

 細田議長 今回の解散命令についてよく分からない。政府がやったことなので、それは正しいという基本的な立場だ。

(Q)国政選挙で教団の票の差配に関わったことがあるか。

 細田議長 私は一切関わっていない。

(Q)議長辞任の理由は体調不良だけなのか。旧統一教会との関係やセクハラ疑惑などの責任もあって辞められるのではないか。

 細田議長 純粋に体調不良。セクハラについては一切覚えがない。訴訟もしている。実際の証言があるわけではない。旧統一教会の問題については、一切、働きかけがあったことはない。

(Q)一国会議員に戻られて旧統一教会の被害者のために活動するのか。

 細田議長 あるかもしれない。被害者は被害者なので。安倍元首相の殺害問題は関係ない。それぞれに対応したい。私も国会議員なので必要な法律が出ればそれに従っていく。

(Q)本当に体調の問題で記者会見を打ち切るのか。

 細田議長 なぜ議長を辞めるかという記者会見。積もる話をどんどんやる記者会見ではない。できる限りのお答えをした。

(Q)もう一度、会見をしてほしい。

 細田議長 会見をするのではなく、対話をしましょう。今までも十分、お答えしてきた。

(Q)まだまだ質問の手が上がっている。

 細田議長 十分、誠意を示したと思っている。