松江市市民活動センター(松江市白潟本町)にある希少な昭和初期の国産グランドピアノが音楽ファンを喜ばせている。特徴的な6本脚を備え、デザイン性を高めた逸品。整備、調律が施され製造当時の美しい音色を奏でる。ホール利用者に貸し出しており、末永く市民に親しまれるよう願っている。 (中島諒)
ピアノは1934(昭和9)年製の「山葉3型」。楽器メーカー大手のヤマハ(浜松市)の前身が手掛けた。胴体と、音を響かせる「響板」に北海道産のエゾマツを使い、手作りで仕上げたとされる。当時、3350円(現在だと8千万~9千万円相当)の高値で売られたという。
昨年4月にセンターの指定管理者になった江友(松江市玉湯町布志名)が、もともと置いてあったグランドピアノの状態が悪いことに気付き、センターの新しい名物にしようと西川ピアノ調律所(鳥取市西町4丁目)の紹介で導入した。
同社によると、昭和初期の国産ピアノ自体、現存数が少なく、整備と調律が施され、誰でも自由に弾ける状態にあるものに限ると国内でごくわずか。同調律所の西川昌孝代表は「日本文化の一つとしてグランドピアノを作り上げようとした時代の力作。当時の様子を想像しながら弾くのも面白いだろう」と話す。
昨年度は新型コロナウイルス禍の影響で音楽イベントの中止が相次ぎ、センターも一時閉館になるなど、ピアノが活躍する機会は少なかった。それでも、15件の利用があり「見た目にも音にも雰囲気を感じる」と好感する声が寄せられたという。
本年度は、山葉3型のレトロな雰囲気に合う日本歌謡の合唱団体などを中心に利用を呼び掛ける。同社の伊藤孝一社長は「日本人にとっての音を感じてほしい。いろいろな人に弾いてもらいたい」と望む。
ホール利用者に貸し出し、料金は、午前9時から午後10時までの終日では1万5千円、正午から午後1時、午後5時から同6時までは千円など利用時間や時間帯で異なる。問い合わせは同センター、電話0852(32)0800。