防寒着は左からS、M、Lの3サイズ。それぞれ3色から選べる
防寒着は左からS、M、Lの3サイズ。それぞれ3色から選べる
座った姿勢を保ちやすく、背中に熱がこもらないよう背面の生地をなくした
座った姿勢を保ちやすく、背中に熱がこもらないよう背面の生地をなくした
前から袖を通して着せることができる防寒着=浜田市黒川町、岩多屋
前から袖を通して着せることができる防寒着=浜田市黒川町、岩多屋
防寒着は左からS、M、Lの3サイズ。それぞれ3色から選べる
座った姿勢を保ちやすく、背中に熱がこもらないよう背面の生地をなくした
前から袖を通して着せることができる防寒着=浜田市黒川町、岩多屋

 車いすやバギーに乗ったままで着脱しやすい防寒着を、福祉用具レンタルなどの岩多屋(浜田市黒川町)が神戸市内の大学、医療福祉施設と共同開発した。体の不自由な人向けで、前から袖を通し、背中側の面ファスナーで留めるデザイン。姿勢の保持に配慮して背面の生地をなくし、膝掛けなしでも温かいよう、足先を覆うなど工夫した。(山口春絵)

 座ったり横になったりした状態から普通の上着を着せるには、介助者が体を抱えて起こす必要がある。作業の負担が大きいので、服ではなく毛布や膝掛けで済ますことが多いが、移動中に何度もずり落ちて不便。防寒着はワンピースのような仕様で足元は車いすの足置きごとすっぽり覆う。

 車いすの背もたれは、利用者の体格に合わせて座った姿勢を保ちやすく設計されている場合があり、衣類の背中側が厚いと座りづらい。加えて熱がこもると、体温調節が苦手な人や暑さを自分で訴えられない人は体調を崩しやすいため、背面の生地はなくした。

 腹部に開けた穴から栄養を送る「胃ろう」の人にも配慮。穴の位置は個人差があるが、ファスナーで幅を調整すれば肌の露出を最小限に抑えて処置できる。首元はボタンで開け閉めするスリット付きで、気管切開のチューブが服に当たらない。

 生地はポリエステル。車いすやバギーには人工呼吸器の電源設備など荷物が載っていることも多く、軽量化を図った。手先が冷えないよう、袖口を絞れば風を遮断できる。

 岩多屋は2020年、全国90カ所以上の病院や障害児支援団体、施設で、体が不自由な子どもたちの服選びについて調査。安全性の高さや介助のしやすさが優先され、選ぶ楽しみはほぼなく、わが子の状態に合わせて保護者が手作りしていることが多いと分かった。

 そのため誰もが着やすく、おしゃれを楽しめるインクルーシブ(分け隔てのない)洋服シリーズ「soot(ソット)」を開始。人気がある、くすんだ色合いで、胃ろうの処置がしやすいトップスなどを21年から販売する。

 防寒着も調査をきっかけに開発した。神戸医療福祉センターにこにこハウスの医師と、非常勤医師として勤務する甲南女子大教授も賛同し、岩多屋の担当者、諏訪園春菜さん(30)とで22年から試作を重ねてきた。諏訪園さんは「誰もがおしゃれを当たり前に楽しみ、暮らしやすい社会になればうれしい。必要な人に届けたい」と話す。

 

 ▽メモ

 S(130~140センチ相当)、M、Lの3サイズで水色、カーキ、ブラックの3色。23日までクラウドファンディングで寄付を募り、協力者に対して各1万2千円で販売。購入はクラウドファンディングサイト「READYFOR(レディーフォー)」から。問い合わせは電話080(2901)7694。