11月のやや肌寒くも爽やかな午後、妻と私は防波堤に立ち、現在の静けさと過去の記憶のはざまにいた。遠くには大山がそびえ立ち、澄んだ空に映える土色の山肌は、初雪をじっと待っているかのようだった。穏やかな波が岩に打ち寄せる音に、釣り人たちの陽気な声が重なり、近くでは1羽のサギが波打ち際をゆっくりと歩いていた。古い家や宿に囲まれた青緑色の入り江で、私たちはラフカディオ・ハーンが「想像しうる最も美しい湾の一つ」と呼んだ美保関の美しさにしばし浸っていた。
勝手ながら私は以前からハーンに親近感を抱いてきた。ハーンと同じく...












