女子ゴルフの笹生優花が6日、サンフランシスコで行われたメジャー大会の全米女子オープン選手権で畑岡奈紗とのプレーオフを制し、優勝した。米国ゴルフ協会によると19歳11カ月17日での制覇は2008年大会の朴仁妃(韓国)と並ぶ史上最年少記録。日本人の父とフィリピン人の母を持つ大器が、76回の伝統がある大会で、日本勢初の優勝者として名を刻んだ。

 女子のメジャーは、歴史や格があるとして米女子ツアーが指定した5大会。日本女子では1977年全米女子プロ選手権の樋口久子、2019年全英女子オープンの渋野日向子に続き3人目の制覇となった。

 その中でも全米女子オープン選手権は第1回が1946年と現在の女子メジャーの中で最も古く、随一の歴史と格を誇る。

 日本勢の挑戦は半世紀ほど前までさかのぼる。70年、国内で無敵だった樋口久子が佐々木マサ子と初めて出場し、ともに予選落ちに終わった。樋口は翌年に予選を突破したが、優勝争いは遠かった。岡本綾子は1桁順位を続け、87年は3人によるプレーオフに進出。ローラ・デービース(英国)に敗れ2位となった。93年には小林浩美が4位となった。

 2011年は宮里美香が首位、宮里藍が2位で予選ラウンドを終えたものの、最終的には美香が5位、藍が6位。19年は比嘉真美子が第2ラウンドまでトップを走り、5位だった。昨年12月の前回大会ではメジャー2勝目を狙った渋野日向子が最終ラウンドを1打リードの首位で迎えたが4位。届きそうで届かなかったのが全米女子オープンのトロフィーだ。

 笹生は8歳で「世界一になりたい」と目標を掲げてゴルフを始めた。166センチ、63キロの体は強さと柔らかさを兼ね備える。シンプルでパワフルなスイングは男子のロリー・マキロイ(英国)がお手本だという。

 トップで予選を通過。3日目を終えてレキシー・トンプソン(米国)に首位を譲ったものの、わずか1打差で最終日を迎えた。「いろんなことを考えてしまうと思う。全部受け入れて、またいい経験をしたい」。覚悟はしていた。それでも、最高峰の舞台に押しつぶされそうになった。

 2番(パー4)はドライバーショットを大きく右に曲げて深いラフに入れ、3番(パー3)はバンカーにつかまったうえに3パット。連続ダブルボギーで一気に後退した。「最初は(崩れて)本当にがっかりした」。支えになったのはキャディーの言葉。「まだホールはたくさん残っている」と励まされ、7番(パー4)でこの日初めてのバーディー。11番(パー4)でもスコアを落としたものの、その後は耐えて好機を伺った。「パー5が最後の方にあると分かっていた。そこで自分の飛距離を生かせると思った」。16番、17番のロングホールに懸けた。

 一方、首位のL・トンプソンもタイトルの重圧から自分のプレーを見失い、スコアを落としていた。16番を前に序盤は6打まで開いていた差が3打まで詰まっていた。最後の勝負所で、笹生は2ホールとも持ち味のビッグドライブからチャンスを作り出した。16番はフェアウエーから、17番はバンカーから1メートル前後にぴたりとつけて連続バーディー。トンプソンは17番でボギーをたたく。この2ホールの明暗で、ともに通算4アンダー。笹生は首位に追い付いた。

 笹生ら最終組の一つ前に、もう一人の主役がいた。日本のエース、22歳の畑岡奈紗だ。首位と6打差のスタートだったが「このコースならチャンスはある。朝一から伸ばせるように頑張りたい」と自信を持っていた。言葉どおりスコアを伸ばして6バーディー、1ボギー、1ダブルボギー。68をマークして通算4アンダーとし、一足先にホールアウトした。畑岡が18番のグリーンサイドで見つめる中、笹生はパーで終え、L・トンプソンは連続ボギーで優勝争いから脱落した。日本勢同士の歴史的なプレーオフが決まった。

 決戦でまずチャンスを迎えたのは畑岡。ラフから約4メートルにつけた。しかし、バーディーパットはカップにわずかに届かない。2ホール目は笹生が外せば負ける2メートルのパーパットを落ち着いて沈めた。3ホール目。畑岡はフェアウエーをキープ。笹生は左ラフ。ここで鍛え上げられたショット力が輝く。ウエッジでパワフルに振り抜くとピン下3メートル、絶好の位置につけた。これを見た畑岡はいつもの正確さを欠いた。ピンまで距離を残し、立場は逆転。そして、畑岡のバーディーパットはショート。入れば夢のタイトルというのに、笹生は淡々としていた。上りのフックラインを慎重に読み、しっかり打った。

 ボールがカップに沈むと一気に感情が爆発、両手でガッツポーズを作った。「信じられない」。畑岡はジュニア時代からのライバルをたたえた。「優花ちゃんの攻めのゴルフは素晴らしかった」。

 「私の夢は世界一、そしてこの大会に勝つことだった。本当に、実現するとは思わなかった」。笹生は賞金100万ドル(約1億1千万円)と5年の米ツアー出場資格を獲得。目標としてきた本場への道も切り開いた。

 笹生は現在、日本とフィリピンの両方の国籍を持つ。東京五輪はフィリピンの選手として戦い、将来的には日本国籍選択を視野に入れているという。4月に松山英樹がマスターズ・トーナメントで日本男子初のメジャー制覇を果たしたばかり。ゴルフ界に快挙が続く。第一人者の畑岡を含め、東京五輪への期待も高まっている。(共同通信=根本美代子)