江津市有福温泉町の有福温泉街で、かつて飲食事業に携わった男性が廃業旅館を改装し、カフェ機能を持つ交流施設「有福どりっぷ」を開いた。「愛着のある温泉街の力になれば」とリフォームを進め、約2年半かけて完成。市民や観光客を迎え入れる温かみのある空間に生まれ変わった。
男性は広島市出身で、江津市の一般社団法人イワミノチカラで事務局長を務める葉柴聖(さとる)さん(36)。島根県立大(浜田市)を卒業後、有福温泉の旅館経営者らが設立した会社に入り、飲食店の立ち上げ事業などに携わった。しかし、温泉街は豪雨被害や旅館火災に見舞われて客足が遠のき、会社は2017年に倒産。それでも、自身の原点でもある「有福の力になりたい」との思いから、廃業旅館を借り受けて21年5月に改修に着手した。
木造の柱やはりを生かしつつ、カウンターや机を手づくりして、9月下旬にオープン。葉柴さんの心意気に共感した友人や知人、地元の団体職員や教員ら約50人が作業を手伝った。
かつてカフェの店長を務めたことがあり、こだわりのコーヒーでもてなす。ゆったりとした時間を味わえるよう、本を読んだり仲間が集まって話したりする場所を目指す。コーヒーの入れ方講座やコンサートの会場にも使う予定だ。
温泉街では呼応するように、宿泊施設の整備など官民による再生事業が進む。葉柴さんは「心身を癒やす場所や、不足する休憩場所の一つとして認知度を高め、温泉街に訪れる人を増やしたい」と意気込む。
コーヒーは1杯500円。土、日、祝日の不定期営業で、午後1時半~同6時ごろに開ける。直近の営業日は29日(午後4~同9時)。問い合わせは葉柴さん、電話080(5233)0891。
(村上栄太郎)