新型コロナウイルス感染によって得られる抗体の保有者率の全国平均が、7月時点で44・7%であることが厚生労働省の調査で分かった。海外に比べて低い水準で、地域、年代で大きな差があった。専門家は、島根県(39・1%)や鳥取県(35・4%)など人口密度が低く、高齢化率が高い県が低い傾向にあると分析。5類移行から半年が過ぎた現在も抗体を持っていない人が一定数いることを認識し、適切な感染防止対策を継続する必要があると指摘する。
調査は厚労省が2022年11月から23年7月まで4回実施。抗体は感染によって得られるN抗体と、ワクチン接種などによって有効な免疫力となるS抗体があり、献血した人の血液からN抗体の有無を調べた。
7月調査で16~69歳の計1万8048人分を調べた結果、全国平均は昨年11月調査と比べて18・2ポイント上昇し、感染力の強いオミクロン株が流行した第8波が影響したとみられる。一方、5月調査比では1・9ポイント増にとどまり、5類移行後は鈍化したことが分かる。
海外は、英国が86%(2023年3月時点)などと高く、昭和大医学部の二木芳人客員教授(感染症学)は米国で約6割との報告があることも紹介しながら「日本は感染対策の意識が高く、海外に比べて保有率が低い」と分析する。
都道府県別でみると、沖縄県が65・1%で最も高く、二木客員教授は「祭りなども多く、県民が集まって歌って踊る文化も関係している」との見方を示す。大都市の東京都60・4%、大阪府57・6%が続いた。最も低いのは青森県の32・6%で、島根県は36番目、鳥取県は44番目に低かった。
年代別は、16~19歳58・5%▽20~29歳57・3%▽50~59歳39・0%▽60~69歳29・6%-と年代が上がるほど保有率が低く、厚労省の別の調査では70~79歳で26・6%、80歳以上で23・2%との結果が出た。
二木客員教授は保有率が低い県の特徴として「高齢者の割合が多く、人口密度が低い」と分析し、「現在も感染が広がりやすい状況があり、対策を緩めると一気に拡大する懸念がある。感染に敏感な人も多いことを認識する必要がある」と指摘。特に医療機関や高齢者施設でマスク着用などの対策を継続する必要があるとの認識を示した。
島根県が全国平均より低い理由について、県感染症対策室の田原研司室長は「重症化のリスクが高い高齢者の感染を防ぐ対策を講じているため」と説明。高齢者に感染を広げない取り組みの必要性を強調し、流行するインフルエンザと合わせて注意を呼びかけた。
(原暁)