政府の有識者懇談会は10日、地域の活性化や所得向上に取り組む優良事例を表彰する「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」のグランプリに「大田商工会議所」(大田市)を選んだ。地元産アナゴのブランド化に取り組み、消費者に分かりやすい魅力の発信や、漁業者の所得向上に貢献している点を評価した。優秀賞の個人部門で、自家製の羊毛製品の開発やコメ生産を手がける大田市の笠木真衣さんが選ばれた。
大田市は全国有数のアナゴ水揚げ量を誇り、2019年にブランド化の取り組みを始めた。大きさ、鮮度は最高級といい、当時数店舗だったアナゴ料理が食べられる飲食・宿泊施設は約30店に拡大。アナゴ目当ての観光客が増えている。
市内では取扱量が増え、魚価も上昇している。大田商工会議所の沖和真事務局長は「漁業者、小売り・卸売り、飲食、宿泊施設など波及効果は大きい。非常にうれしい」と喜んだ。
優秀賞個人部門の笠木さんは18年に夫婦で大田市に移住し、「カサギ ファイバー スタジオ」を設立。羊の飼育から羊毛の製品作り、販売までを一貫して手がける。
優秀賞のビジネス部門では、養蚕業に着目して桑畑の再生などに取り組む「フォーレスト八尾会」(富山市)と、卵の生産や飲食店運営を手がける「デイリーファーム」(愛知県常滑市)が選ばれた。
コミュニティ部門では、農業を学ぶ高校生が子どもに食育を行う「北海道中標津農業高校 マネージメント研究班」(北海道中標津町)と、資源の循環利用に取り組む「大月町備長炭生産組合」(高知県大月町)を選定した。
第10回記念賞は、グリーンツーリズムを進める「仙北市農山村体験推進協議会」(秋田県仙北市)に決まった。
政府は選定した団体や個人の活動をホームページなどで紹介している。
ディスカバー農山漁村の宝では2019年にも、大田市静間町の海産物の製造・加工・販売を手がける「魚の屋」がグランプリに選ばれている。(勝部浩文)