巨大な甑を引き上げ、コウゾの束を取り出す佐々木誠さん、さとみさん夫妻=江津市桜江町長谷、風の工房
巨大な甑を引き上げ、コウゾの束を取り出す佐々木誠さん、さとみさん夫妻=江津市桜江町長谷、風の工房

 江津市の指定無形民俗文化財「勝地半紙(かちじばんし)」で使われるコウゾを蒸して樹皮をそぎ取る「そどり作業」が4日、同市桜江町長谷の風の工房で始まった。釣り鐘のような形をした「甑(こしき)」と呼ばれる巨大な杉桶(おけ)を使って蒸し上げる伝統的手法で、年末までに1・7トンを蒸して1年分の原料を作る。

 

 勝地半紙を唯一継承する同工房の佐々木誠さん(65)、さとみさん(57)夫妻が作業する。同市桜江町内で栽培するコウゾ260キロを束にして鉄釜の上に載せ、高さ1・7メートル、直径1・4メートルの甑をかぶせて蒸した。

 3時間半後に甑を滑車で引き上げ、軟らかくなったコウゾの樹皮を丁寧に手でそぎ取った。乾燥させて来年1月から使う。

 年末までに同じ作業を6回繰り返し、半紙や彩色和紙などの原料として活用する。誠さんは「今年も質の良いコウゾができた。新商品に挑戦しながら伝統の風景を残したい」と話した。
(村上栄太郎)