1958年に開店し、島根県内唯一の百貨店として親しまれてきた一畑百貨店(松江市朝日町)が2024年1月14日、65年余りの歴史に幕を下ろす。閉店を前に、百貨店で長年働いてきた人や取引で関係があった人たちの現場の姿や思いを記録する。

 「お待たせしました」

 12月上旬、一畑百貨店外商部の山崎桂子担当課長(56)が出雲市内の顧客宅を訪ねると、スーツ姿の高齢男性が「よく来たね。どうぞ上がって」とほおを緩めた。修理した腕時計と依頼されていた品を渡すと、談笑が始まった。

 男性は会社経営の川瀬清さん(86)=出雲市神西沖町。印象に残った書物や友人との懇親会の予定などの話題で和やかに時計の針が進む。一畑百貨店との付き合い...