コロナ禍前に落語の寄席でにぎわった写真を見ながら、客足の回復を願う本山誠さん=松江市末次本町、味処もと家
コロナ禍前に落語の寄席でにぎわった写真を見ながら、客足の回復を願う本山誠さん=松江市末次本町、味処もと家

 山陰両県で、恒例の観光イベントを条件付きで再開する動きが出てきた。新型コロナウイルスワクチンの接種が始まって感染リスク低減の見通しが立ち始めたため。接種が外出の動機づけになる可能性があり、客足が遠のいた飲食店も一筋の希望を感じ取っている。

 両県38市町村の高齢者向けのワクチン接種率は11日現在、1回目で18市町村、2回目で4町村が5割を超し、観光イベント開催の後押しになっている。

 2回目接種率88・0%の島根県知夫村は5日に村内の隠岐ユネスコ世界ジオパークを巡るイベントを開いた。8月上旬には30年以上歴史がある「サザエのつかみ取り」を村内宿泊者などに絞り、2年ぶりに行う。

 自然環境を生かしたサイクリングイベントを展開してきた鳥取県南部町では今秋、町外参加者も受け入れて100人規模で開く。町観光協会の梅林文美代事務局次長は「経済効果を期待する町民もいる。やっと開催できる」と力を込める。

 実際、接種後の外出を口にする住民は少なくない。15日、松江市で1回目を終えた無職男性(77)は「2本目を打てば安心して街に出られる」という。ひいきの飲食店があり、久しぶりに顔を出すつもりだ。

 「接種が終われば行く」との常連客の声を励みに客足回復を待つのが、同市末次本町の居酒屋「味処もと家」の店主、本山誠さん(68)。定期開催し、店の売りになった落語の寄席はファンが多いといい、本格的に再開できる日を心待ちにしている。

 気を付けたいのは、集団免疫の獲得は緒に就いたばかりで、接種者でも感染防止策は欠かせないことだ。

 松江医療センターの池田敏和統括診療部長は、接種後に感染する可能性が0・01%あるとの調査や、国民の8割以上が接種という集団免疫獲得に遠い現状などを指摘。「接種後も気を緩めずマスクを着けて3密を避ける生活を」と注意を促す。 (多賀芳文)