
失敗したこともありますけど
ここが自分の場所だって感じます
「中高生の僕が今の自分を見たら憧れると思いますよ。それくらい今の暮らしは理想的です」と語る古浦太朗さん。地元松江市で会社員として働き、プライベートでは2児の父。新居の完成も控え、仕事に子育てに充実した日々を送ります。
18歳、縁もゆかりもない沖縄へ
古浦さんの最初の転機は高校卒業の時。大学進学のために選んだ地は、縁もゆかりもない沖縄でした。
「まさか沖縄で大学生になるなんて、僕にとっても予想外でした。小学校からサッカー部で運動は好きだったんですけど、勉強方面は身が入らずで、案の定大学入試でも失敗してしまって。二次試験で体を使った実技のある大学を探していたら、担任の先生に『沖縄に行く覚悟ある?』と聞かれたんです。僕に合いそうな大学を見つけてくれたんですが、場所が沖縄という。『沖縄か……行きます!』と即答しました(笑)。地元を離れるつもりは全くなかったんですが、それも面白いかなって。僕、割と楽観的なところがあるんですよ」
生まれて初めて飛行機に乗って訪れた沖縄は開放的で明るく、思った以上に気質に合ったといいます。
「大学の4年間でしっかり沖縄に染まりましたね。ゼロから友達をつくることで人間力も鍛えられました。大学、バイト、サッカーと充実した毎日で、気がつくと就活の時期。うちは親が教員なのもあって漠然と自分もその方面に進むのかなと思っていたんです。でも大学の勉強についていけず教員免許の取得に挫折し、それならと松江の企業を調べていた時に、今の会社を見つけました。親や親戚に聞くといい会社みたいなので、入社試験を受けたんです。思えば進学も就職も計画性なく直感的でしたね」
水が合った沖縄を離れ島根に戻る決断に迷いはなかったのでしょうか。
「うちは母子家庭で、姉ふたりと僕を母が働きながら育ててくれました。僕は長男ですし地元で母の近くで暮らしたいという思いがありましたし、松江が好きなんです。地元へ帰る気持ちは揺らがなかったですね。沖縄から戻った時は感慨深かったです。寒い時期だったんですけど、スキッと冷たい空気をいっぱいに吸い込んで、『ああこの空気だなあ』って。寒い朝に母親の味噌汁を飲んだ時も、しみじみ帰ってきたなあって思いました。薄いんですよ、うちの味噌汁。母は『その方が健康にいい』と言うんですけど。すごく薄くてなつかしい、うちの味です」
Uターンして出会った大切な存在
新卒で入社した「山陰ケーブルビジョン」は、松江市にある地域密着型のケーブルテレビ局。営業職として働く中で、仕事をする環境としての島根の魅力を感じています。
「人と話す営業の仕事は大好きですね。地元の人と話して契約をもらったり、初めましての人が知り合いの知り合いで盛り上がったり。地域の中で仕事している感じが好きですし、社会人になって島根の人の良さを感じることも多いです。新しく出会う人もみなさん優しいですし、僕みたいに外に出て戻ってきた人を温かく迎え入れてくれて。働きやすい場所だと思います」

そして後に妻となる亜希さんと出会ったのも職場でした。
「妻の亜希は会社の先輩です。新入社員時代に一目惚れしてどうにか仲良くなろうと必死でした。朝早く出社して彼女が通る階段を掃除しながら、話しかけるタイミングをつくったりして。ほとんど社内ナンパに近かったですね(笑)。今では子ども2人にも恵まれ、仕事も楽しくて、この会社にして良かったなあって思います。あまり計画的に決めた選択ではなかったかもしれませんけど、間違ってなかったと思います。直感的な決断が振り返って正解だったと思うことは多いです。進学も、就職も、結婚も、人生の大きな選択で間違えたことは一度もないと思っています」
一方の妻・亜希さんは、古浦さんに出会う前は結婚願望ゼロ。ひとりの自由な時間を大切にしたいタイプだったといいます。
「私は夢や目標に向かって進んでいくタイプじゃなくて、慣れ親しんだ環境で自分らしいペースで暮らしたいっていう感じでした。結婚願望も家庭をもつイメージも全くなくて、友達にも『絶対結婚しないと思ってた』って驚かれます(笑)。でも、彼と出会って子どもたちが生まれて。馴染みのある地元で家族で過ごす時間が幸せだなって思います。この子たちを育てていくっていう目標もできて充実しています」(亜希さん)

島根は街と自然のハイブリッド
仕事に打ち込み、素敵なパートナーと子宝に恵まれ充実した日々。そんな古浦さんが思う、地元島根で暮らす魅力とは何でしょうか。
「島根から出る楽しさもあると思いますよ。見たことないお店があったり、色々な人に出会えたり。でも場所にしても友人にしても、慣れ親しんだものに囲まれた環境って安心できると思います。外の新鮮味もいいけど、この安心感には代えがたいものがあります」
一度外に出たからこそ再発見した地元の良さ。島根は、家庭をもち子どもたちを育てるにも理想の環境だそうです。
「よく島根は田舎だって言われますけど、街と自然のハイブリッドだと思うんです。市街地もあって海も山も湖も近いですし、車があればどこへでも出やすいです。他にも楽しい場所はあると思いますけど、僕にとって家庭をもつなら島根が一番ですし、子育てにも最高の環境です。平日は忙しくて帰りが遅くなることもあるんですけど、妻と子どもたちが帰りを待っていてくれるんですよ。夜、家に着くと玄関の向こうから走ってくる気配がわかるんです。ドアを開けた瞬間に、家族が笑顔で『おかえり』って迎えてくれた時、ここが自分の場所だなって感じます。
これまで深く考えず行動して失敗したことも何度もありますけど、今まで楽しく生きてこられたのは周りの人のおかげです。そんな家族や友人に囲まれた今の環境が好きなんですよね」
生まれ育った松江の街並みを望む川沿いで。
古浦さんの大切な人たち



Profile
古浦太朗さん(28歳)/沖縄県から松江市へUターン小中高校ではサッカーに打ちこみ、すくすくと育つ。大学では沖縄へ進学し、自然豊かな名護市で4年間を過ごす。卒業後は地元へUターン、山陰ケーブルビジョンに就職。職場で出会った亜希さんと結婚。現在は2児の父。

(文:山若マサヤ 写真:七咲友梨)

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