島根県文化財保護審議会(林良彦会長)は25日、島根大が所有するニホンアシカの剝製標本1体を、県の天然記念物(動物)に指定するよう同県教育委員会に答申した。かつて東アジアなどに広く生息し、島根半島や竹島(島根県隠岐の島町)でも繁殖が確認されていたが、1950年代に絶滅。歴史を伝える貴重な資料と認められた。県や県内の大学が所有する8体のうち、文化財に指定されれば初めてとなる。(原暁)
島根大の剝製は、1886年2月に松江市美保関町の近海で捕獲された。体長1・4メートルの雄の幼獣で、捕獲後、島根大教育学部の前身・島根師範学校が剝製標本として保管。現在は島根大総合博物館(松江市西川津町)で展示されている。
県教委文化財課によると、ニホンアシカの剝製標本は世界で19体ある。島根県関連では、島根大の1体のほか、三瓶自然館サヒメル(大田市)に5体、しまね海洋館アクアス(浜田・江津両市)に1体あり、さらに、県所有の1体が領土主権展示館(東京都)に保管されている。
この中で、島根大の剝製は、捕獲場所や年代が判明していることが指定答申の決め手になった。同課の今福拓哉主任は「(ニホンアシカは)詳細な研究が行われる前に絶滅したとされる動物で、世界的にも貴重だ」と話した。今回の答申に伴い、県指定の天然記念物は38件となった。
審議会はこのほか、奈良時代(7世紀後半)の寺院跡で、県指定史跡の「山代郷南新造院跡」(松江市山代町)について指定範囲を広げるよう答申した。
寺院跡の南側の中央で寺院の門跡が見つかり、さらに西側で区画溝が確認された。これで伽藍(がらん)配置の中軸線が判明し、寺域の復元が可能になった。また、南新造院の建立より古い時期の建物跡も見つかったことで、寺院建立の過程が確認できる遺跡となったという。