先々代が作った「らくだ」の稽古に励む六代目桂文吾さん=米子市皆生温泉2丁目
先々代が作った「らくだ」の稽古に励む六代目桂文吾さん=米子市皆生温泉2丁目

 米子市在住の落語家・六代目桂文吾さん(86)が、四代目が作った古典落語の演目「らくだ」を14日に披露する。多くの名人が客席を魅了した大作で、文吾さんは「文吾の名を継いだ以上、恥じぬようやり通したい」と稽古に励む。(黒沢悠太)

 

 



 文吾さんは京都市出身。14歳で五代目に入門し小文吾として落語家、俳優として活躍したが27歳で引退。縁あって米子市内で就職し定年まで勤め、2001年に活動を再開した。21年秋に84歳で文吾を襲名した。

 らくだは四代目(1865~1915年)が創作した。あだ名が「らくだ」の男がフグ毒で死に、それを兄貴分の熊五郎が見つけ、通りがかった紙くず屋を巻き込んで葬儀の準備をする内容。上演1時間半を超す上、登場人物が多く、人が酔っ払う場面も入り、高い技量を要する。歌舞伎の演目にもなった。

 六代目笑福亭松鶴さん、五代目古今亭志ん生さん、六代目三遊亭圓生さんといった名人が得意とし、近年は笑福亭鶴瓶さんや立川志らくさんが取り組む。

 文吾さんは師匠にらくだを教わったことはないが、活動を再開した20年ほど前に思い立ち、慕っていた人間国宝の桂米朝さん(故人)に指導を頼んだ。米朝さんは年齢を理由に断ったが「お前ならできる」とカセットテープを郵送してくれた。聴くと自分には荷が重いと感じその時は断念した。

 その後に文吾襲名の話が浮上し「らくだが満足にできなければ継げない」と奮起。米朝さんや松鶴さんの音源を聴きながら21年春に稽古を始めた。落語会で披露すると、客から「時間を忘れるほど話の世界に引き込まれた」と褒められ手応えを感じ、襲名を決めた。

 長尺で玄人向けな作品のため襲名以降は披露する機会に恵まれなかったが、ファンでつくる「文吾らくだの会」(角真一会長)が企画し、襲名後2年越しの上演が決まった。文吾さんは「自分なりの演技力で自然に演じたい」と意気込む。

 米子市文化ホール(米子市末広町)で午後2時から。前売り券1500円(当日1800円)で同ホールと市淀江文化ホール、米子まちなか観光案内所で取り扱い、残りわずかになっている。問い合わせは角会長、電話090(1188)0211。