出雲市内には2023年11月末現在で4477人の外国人が暮らし、そのうち2829人をブラジル人が占める。本紙で在住ブラジル人の活動を紹介する記事が増えているが、記事は日本語。異国で暮らすブラジル人の皆さんに地域の話題を届けようと、ポルトガル語で新聞を作ってみた。(出雲総局報道部・佐野翔一)

2023年11月、ぜひブラジル人に伝えたいニュースがあった。本紙の11月20日付「ディオッサ出雲 2部昇格/なでしこリーグ」。スペナザット・ラウラ選手(25)、タイス・フェへ選手(24)が所属する女子サッカーのディオッサ出雲FCが、9度目の挑戦で悲願のなでしこリーグ2部昇格を決めた記事だ。
22年のなでしこリーグ2部入れ替え戦で悔しい敗戦を経験し、乗り越えて見事、昇格を果たした。現地で取材していた記者は歴史的な瞬間に鳥肌が立った。出雲で頑張るブラジル人の姿を伝え、明るい共通の話題が生まれ、地域に愛着を持ってほしいと考えている。

ポルトガル語の翻訳をお願いしたのは、大手製造業で通訳として活動するブラジル・サンパウロ州出身の日系2世のマソーラ・ミリアン・リウエ・イモトさん。電話で企画趣旨を伝えると、快く翻訳を引き受けてくれた。仕事終わりのマソーラさんに山陰中央新報社出雲総局に来てもらい、作業を始めた。
インターネットの翻訳機能で訳した文章と日本語の文章を見せたが、正しいのか、間違っているか分からなかった。マソーラさんは真剣な表情でポルトガル語訳の紙に赤ペンを入れた。「真剣」「悲願」「貢献する」など聞き慣れない単語は意味を説明しながら進め約1時間半で完成した。
ポルトガル語はつづりや文法が難しかったが、勉強してディオッサ出雲の選手とポルトガル語で話してみたいと思った。完成した新聞はA4判。ラウラ選手、フェへ選手のプレー写真と見出しを付けると外国語新聞のような雰囲気が出た。2人のインタビュー動画のQRコードを添付している。ぜひ多くのブラジル人に記事を見てもらい、出雲のニュースで盛り上がってもらえるとうれしい。

(ポルトガル語新聞) → PDF版はこちらから
記事の日本語訳は以下の通り。
ブラジル人選手2人が引っ張る ディオッサ出雲が「なでしこリーグ」に昇格
女子サッカーのディオッサ出雲FCが11月、愛媛県であった「入れ替え戦」を勝ち抜き、なでしこリーグ2部への昇格を決めた。4チームが出場した入れ替え戦は3位以内に入れば昇格でき、通算1勝1分け1敗で3位となり、9度目の挑戦で悲願を達成した。
ディオッサを引っ張るのは、昨年夏からチームに加入した2人のブラジル人選手だ。どちらもFWのスペナザット・ラウラ(25)とタイス・フェへ(24)。ラウラはスピードを生かしたドリブルが得意で、フェへはシュートが強烈で、決定力がある。2人とも入れ替え戦の全3試合に出場し、チームに貢献した。
日本は女子代表が2011年ワールドカップで優勝するなど、女子サッカーのレベルが高い。来年から2人がプレーする「なでしこリーグ」は、日本のアマチュア最高峰リーグになる。高いレベルのチームと戦うには、2人のさらなる活躍が不可欠だ。ラウラは「苦しいことも楽しいことも一緒に乗り越えた出雲のみんなと一緒に次のステージへと進んでいきたい」とし、フェへは「県外のアウェーでもファンの皆さんが駆けつけて声援をくれたことが大きな支えになった。さらにレベルアップしてチームに貢献したい」と意気込んだ。